Formula試験運転

試験運転中です

マクラーレンは本当に「アマチュア」に見えるのか?

なんともいろんな意味で微妙だったカナダGPを終えて、BBCF1のお偉いお方、アンドリュー・ベンソンが吠えているので訳しました。


訳してみての印象ですが、いやー、このひととにかく、ホンダに厳しい。というか、このひと前もこんなような文章書いてて、なんかマクラーレンが酷い結果だすたびにチクチク言ってくるんですよねー。いやまあ別にホンダがすばらしいなんて抗弁するつもりはありませんが(応援はしてますよ!)、そんな言わんでもーな感じ。


てかそもそも、今年のマクラーレンの車体はフェラーリ並みだ!アップデートが2発決まればメルセデス並みもありうる!ってマジなんですかねぇ。個人的には、思わず「キリッ」とか末尾につけたくなる発言ですな、的な感じなのですが、真偽のほうを判断できるほどの知識などもちろん持ち合わせてるわけもなく、とりあえず襟を正して正座してちゃんと読んでみたりしているのですが…。


ともかくも読んでも面白くはない記事なのかもしれませんが、ちょろちょろヤな感じのこと言ってるような文章*1はあまり日本語では伝わってこない傾向にあるので、まあ孤島ブログ的には逆張りでもしてみよかしら、といったところです。


元記事はこちら

カナダGP:マクラーレンは本当に「アマチュア」にみえるのか?


フェルナンド・アロンソは、マクラーレンとエンジンパートナーのホンダに向けたたった数秒の無線のメッセージで、絶望的に困難だったカナダGPの週末全体をまとめた。


燃料をセーブするようにとの要求に対する、年俸2600万ユーロ(4000万ドル)の二回のワールドチャンピオンからの返答は、疑いなくフラストレーションの噴出と解釈されるものだろう。マクラーレン・ホンダの何分の1かの予算のチームの新米ドライバーたちとの16位をめぐってのバトルのさなかのことだった。


悪名高くも気難しく、また多くを要求する性格との評判だが、今シーズンはこれまで平静と忍耐の一枚の絵画のようだった男の、真の考えがようやくあらわにされた一幕だった。


しかし、この返答は、ほぼ間違いなく、そういったことよりもずっと多面的で、より微妙なものだった。


ザウバーのフェリペ・ナスルが7.5秒後ろにいる。」アロンソは言われた。「われわれは燃料をセーブしなければならない。ターゲットゼロにしなければならない。」


「やりたくない。いやだ。」返答が来る。「今すでに大きな問題を抱えている、こんな状態で走っているし、アマチュアのように見えるよ。だから、レースがしたい。そのあとで燃料に集中するよ。」


「アマチュア」という言葉はかなり注目を集めた。そしてそれは、大いに歓迎されたF1復帰という中、ホンダの7レースがいまだに直面している課題の大きさを端的に物語っている。


一言で、アロンソはレースをまとめたのだった。この日本企業はポジティブな先行きを期待してのスタートをきったが、すぐに困難に直面することになった。


金曜午後時点では、ホンダF1のトップ新井康久は、この週末に対しとてもポジティブな感触があると語っており、ここでホンダはシーズン中に許可された9トークンのうちの2トークンを使用した。エンジンの信頼性と効率の向上を狙ってのことだった。


数時間後、ホンダは土曜朝の最終プラクティスの前にアロンソのエンジンを交換を余儀なくされる問題を発見した。アロンソがそのセッションの1ラップ目の走行をするころには、チームメイトのジェンソン・バトンのエンジンがストップした。そのせいでバトンはトラック上で立ち往生することになり、セッションも時間前に終わることになってしまった。


レースに車を間に合わせるのに必要だった新パーツのために、バトンはグリッド最後尾でスタートして、なおかつレース中のドライブスルーペナルティをも受ける羽目になった。


メディアはホンダの置かれた境遇を十分に理解していたので、これまでのところは新井氏に対し比較的あたりはやわらかだった。しかし、土曜の予選後には、彼は初めてメディアからの集中砲火にさらされることになった。彼の両脇に座っていたアロンソとバトンは、ともにうつむきがちであり、その表情はかぶっていたキャップに隠れていた。まるで次のように語るかのように。「僕らはこの事態と関わるつもりはないよ。」


24時間後、どちらの車も別々のエキゾースト関連の問題でレースからリタイアした。そしてアロンソの指摘したメッセージによって、ホンダの苦境は世界のテレビ観戦者に漏れ伝わることとなったのだった。


しかし、これはフラストレーションから生まれたものでもなければ、感情から生まれたものでさえない。


あるレベルでは、これは単に、アロンソが言ったように、「燃料をセーブするタイミングについての意見の相違」だ。


彼は言った。「自分をオーバーテイクしようとしている車に囲まれて、バトルの真っ最中にいるとき、燃料の優先順位は低いよ。レースの後のほうで燃料をセーブするための時間はもてるんだ。」


「だから、燃料セーブを3、4回伝えられた後、僕は言ったんだ。『今はレースをしてちょっと楽しませてほしい、あとで燃料のことは考えるよ。』ってね。」


それまでのレースやカナダでのホンダの信頼性の状況を考えれば、燃料セーブが切実な問題ではないとアロンソが考えていたというのももっともなことだ。もしそうなら、彼は正しかったことが証明される。


けれどもそれ以上に、これはほぼ間違いなく、早く準備を整えてほしい、というホンダへ向けたメッセージだ。


アロンソがメディア対応を終えたあと、マクラーレンのレーシング・ディレクターのエリック・ブーリエに対して、この件への質問が差し向けれらた。そのとき彼はこう答えた。「彼に聞いてくれ。」そしてその後で、こう付け足したのだ。「私はおそらくはイエスだと思うがね。」


アロンソがある時点で怒りだすのではとの懸念はあるかとたずねられたときは、こう語った。「もしわれわれが来年もこうならば、彼は間違いなく怒るだろう。しかしそういう事態にはならないと思う。」


「君たちは彼をいつも見ているのだから、君たちは彼が今いる場所に満足しているのが分かるだろう。彼は勝ちたがっている。われわれはそれを知っている。われわれは同じ課題を共有しているのだ。」


「彼はこの前、今年は来年に備えるためのテストイヤーのような年だと考えている、と私に語ったよ。だから、彼はフラストレーションを感じるほどに思いつめたりはしないだろう。」


たしかに車を降りるや、アロンソはいつものポジティブな彼にもどっていて、マクラーレン・ホンダのプロジェクトを信じている、このプロジェクトはよくなっていくだろう、フェラーリを離れたことに後悔はまったくない、と主張した。


しかし、マクラーレンとホンダは16位争いをするためにアロンソに4000万ドルの年俸を払っているのではない。彼は勝つためにそこにいるのであり、そしてその見込みはまだまだ薄ぼんやりとしたままだ。


マクラーレンは、メルセデスとの巨大なギャップはすべてがエンジンのせいなのではない、競争力を高めるには車にはまだダウンフォースが必要だ、と言って公的にはホンダを支える姿勢を見せている。


これは確かに真実であるが、メルセデスに対しての不足分のバランスとしては、明らかにエンジンのほうが重荷になっている。マクラーレンの車は実際にはとてもよい。


マクラーレンの車は、メルセデス搭載車に対し、ストレートで時速20km遅い。また複数の情報筋によれば、ホンダエンジンは少なくとも75馬力は劣っていて、エンジンのハイブリッド側に特別な問題を抱えており、燃費が目だって悪いようなのだ。これは、いくつかの指標では、今年のF1において、4つのメーカーのエンジンの中でワーストだということだ。


エンジンのパフォーマンスの不足のせいだとおもわれるタイムロスを考えてみると、マクラーレンは実際はとてもいい車だということは明らかだ。確かにメルセデスには匹敵しないだろ、しかし、フェラーリの域、すなわちグリッド上で2番目にすばらしい車の位置にはいる。


マクラーレンは次のオーストリアで、車への大きなアップグレードがあり、その次のイギリスでさらにもう一度予定している。もしそれらがチームが期待通りに働けば、車はメルセデスと同じくらい良くなることもないわけではない。


このことをふまえて考えてみよう。ホンダは2013年からエンジンの開発を始めていて、それはメルセデスが開発を始めた年から3年も遅れているのだが、おそらくはホンダは、F1への参戦が1年早すぎたのだ。しかし、参戦してしまったのだから、成功しなければならない。


「パートナーを非難することはたやすいが、われわれはサポートしていかなければならない。」ブーリエは言った。「われわれはこのリカバリーのための時間を加速させるのを手伝うためにサポートを申し出ているところだ。」


「公平のために言うと、彼らは2年前に参戦を決めた。ここにいて勝利することはたやすいことではない。われわれには登るべき山がある。だが、それはとても高い山のように見える。適切な装備を確実にすることが必要なのだ。」


メルセデスドライバーのルイス・ハミルトンニコ・ロズベルグが控えめだが余裕のワンツーを決め、パワー、燃費効率、ドライバビリティを兼ね備えたメルセデスエンジンが、残り8つの入賞の枠に5人のドライバーを送り込んだのを見たあとでは、ホンダは目の前の課題の大きさを見誤ることはないだろう、とわれわれは確信しているのだ。




アロンソ「ぷんぷん!」*2



☆個人的単語リスト
novice=新米
fraction=一部分、分数
fit=感情などの爆発、噴出
faceted=~の面を持つ
bit=一節、一場面
herald=~を歓迎する
encapsulate=~をカプセル化する
strand=~を座礁させる
grill=~厳しく尋問する
betray=秘密を漏らす
may well=~するのももっともだ
academic=机上の、非実用的な
get one's act together=しっかりする
yawning=~口を大きく開いた
conspicuous=明白な

*1:ちなみにコメント欄をさらっと見てみると、そもそもF1のレギュレーションが終わってるわ、みたいな論調っぽいです。ホンダが原因じゃ!とかはあまりなくて。いや、まあレーティングが高いコメントをちょっと見ただけなので断言するとアレであるのですがw

*2:と解釈させたげにこの写真を添付してたアンドリューさんまじ策士!(違

ボッタス、トップチームへの道

えーF1の規則変更云々的な話はガン無視で、今回も駄訳をたれながして参ります。

で!今日の主役はというとバルテリ・ボッタス氏。どのくらい良いのかはまだ議論の余地があるのかもしれないですが、それでも間違いなく良いドライバーであることは、誰も認めるであろうこの人。予選の速さ、キャリアの若いドライバーらしからぬレースの完成度。すばらしいですよね。

が、しかし、その力の割には、あんまり目立たない気がするんですよね。もちろん、いい結果を出せばそのときはスポットライトがあたるのですが、なんとも捕まえにくいというか、クローズアップしづらい部分がある。リカルドのありえないくらいイイ笑顔*1とか、Maldoパイセンの圧倒的存在とかそういうのがない。そもそもフィンランド人F1ドラのくせに「~ネン」じゃないし。走り以外の部分で注目を集めるとしたら、せいぜいそのただならぬベテラン感くらいでしょか。マッサのえばーぐりーんなフレッシュさとの対比で、いいコンビだなとは思いますがw

まあともかくも、そんなあたりをマーク・ヒューズ氏がアツく語ってくれています。これまたなかなか愛のある文章で、個人的にはかなり好きですね。たしかに、ボッタスがあの武士キャラを捨てたら…?*2あの温厚篤実なキャラじゃなくて、たとえばライコネン節とかやる人だったら?そしたらば、人気も爆発→チケットも激売れ→バーニーの覚えめでたく後押し獲得→更なるトップチーム移籍!とか…なってたんですかねぇ?いや、マーク・ヒューズさんがそういうことを明言してる、というわけでもないのでしょうが。

今回はたぶん決定的に訳がおかしいという部分はおそらくないはずなので、★はありません。まあそれでも精度のほうはお察しなわけですがw


バルテリ・ボッタス:主張の少ない人こそ注視しなければならない

SKYF1のマーク・ヒューズが、2016年のドライバー市場の鍵となりうる物静かだがとても印象的なフィンランド人の人物評を行う


バルテリ・ボッタスはおそらくは間違いなくスペインGPの伏兵だった。予選とレースともにウィリアムズのマシンを最大限までプッシュし、若干ペースに勝るフェラーリセバスチャン・ベッテルを視界に収め、ベッテルより古いスペックのフェラーリキミ・ライコネンからの多くのラップにわたってかけられていたプレッシャーを冷静にいなした。


彼が将来のドライバー候補の一角として、メルセデスフェラーリの両方のから注視されているのは、このようにチャンスを最大限に生かし、混乱を最小限にとどめる能力をともに備えているからにほかならない。彼の物静かで感情を表に出さない人格の裏には、本物のタフな精神があり、それゆえに、ライコネンが何度も何度もかけ続けたタイプのプレッシャーにおいてさえ、彼は一切ミスをしない。


その落ち着いていて感情に流されない人格の核の部分により、彼はとくに意識しなくても、チームのパフォーマンスに影響してしまうような種類の論争を起こすことがまったくない。これが特にフェラーリでは高く評価されている*3。しかしまた、それが彼の技術がファンから広く認知されない理由のひとつでもあるのだ。ボッタスには物語がない。つまり、メディアを惹きつけるようなものがないのだ。彼のパフォーマンスが不思議に思われてしかるべきものだったときでさえだ。たとえば、どうしてチームメイトのフェリペ・マッサがシーズン序盤において彼を上回っていたのかなどだが*4、彼の答えがメディアが引用したくなるようなものでることはめったにない。


実際には、彼がメルボルンの予選で負った筋肉の断裂のせいで、それからの数レースは彼が認めていたよりずっとパフォーマンスは制約されたものだった。事故後の数週間、彼はトラックにいないときもずっとアイスパックを負傷した箇所に当てていた。しかし、バルセロナでは、再び自分のベストに近づいたようだった。Sky Sports F1のマーティン・ブランドルはボッタスが四番グリッドを獲得して復活したラップを、その冷静さ、コントロールされた動き、正確さに驚嘆して実況した。彼のレースでのラップは強烈であり、再びデリケートなタイヤから最高のパフォーマンスを引き出す彼の尋常ではない感覚を示してみせた。彼の才能はルイス・ハミルトンや、フェルナンド・アロンソのように飛んだり叫んだりはしない。しかし、彼は仕事で要求されるすべてのもの苦もなくやってのけるし、それは彼にとってはほとんどなんの支障もないことのようにみえる。


ウィリアムズは2016年も彼のオプションを持っていて、完全にそれを行使するつもりだが、もし必要ならフェラーリもそのオプションを買い切るのに必要な額を引き上げることも疑いがなくありうることだ。


マウリツィオ・アリバベーネがライコネンの契約を延長する全く期待すると言っていたのはたった数週間前だが(ライコネンの契約は今年末で切れる)、いまやフェラーリライコネンのマネージャーのスティーブ・ロバートソンとの交渉は暫定的な形において進行しているというところを見るにつけ、アリバベーネがほかの利用可能な選択肢を持ちたがっているように思われる。ルイス・ハミルトンについて疑問はある。彼は依然としてすぐにでもメルセデスとの契約延長が予想されている状況だが、F1の最高権力者であるバーニー・エクレストンフェラーリの方針に対し目配せを続けている。これらのあいまいな状況はすべてボッタスの将来に直接影響を与える。2016年に向けて、彼は2015年のトップ3チームである、メルセデスフェラーリ、ウィリアムズのどこにいる可能性もありうる。


ハミルトンとアロンソは今なおもっとも観客動員力のある存在であり続けており、プロモーターという役割においては、バーニーはこの二人のどちらかは来年別のいるチームのを見たがっている。ボッタスは、動員力は全く持っていない。彼の業績はいまだに比べられるものではないし。比較しうるものであったとしても、彼のキャラクターはプロモーションに自らを供したりすることはしないだろう。ファンがものすごく気にいっているライコネンの「全然興味ない」というような、部外者であるかのような振る舞いさえ期待できそうにない。それでさえ、ボッタスという人物に十分すぎる関心を生み出そうものを。


彼の将来は、自らの手の内にはなく、自身のパフォーマンスを超えたさまざまな状況にかかっている。しかし、いま彼は万全の状態にもどりつつあるので、われわれはほぼ間違いなくいっそう優れたドライブを目撃することになるだろう。そしてそれは彼が真のトップチームの真剣な関心を引くのに十分な存在であることを証明することになるだろう。




"Leave me alone!"はこの人にはやはり無理そうですな



☆個人的単語リスト
look out for=に警戒する、を注意して捜す
profile=人物評を書く、~を特集する
arguablyほぼ間違いなく、議論の余地はあるかもしれないが
below-the-radar=こっそりと、目立たないよう
unflappably=冷静に
soak up=吸い上げる
voice over= (画面に映らない)ナレーターの声,(説明の)語り.
composure=落ち着き、冷静
on top of=~を支配して、うまく処理して
tentatively=ためしに、ためらいがちに
supremo=最高権力者
box office=チケット売り場
be part of=~の一部になる、関わる

*1:いやまあボッタスも結構いい笑顔になるんだけど、笑顔芸ではやはいリカルドの右にでるものはいないかなとw

*2:武士キャラとか今勝手に言いはじめただけだけど、なんかアロンソとかよりよっぽど武士っぽくないですかね、あの人w?

*3:アロンソ……。・゚・(*ノД`*)・゚・。

*4:マッサ……。・゚・(*ノД`*)・゚・。

マーティンの思い出 by ナイジェル・ルーバック

ちまちまとマイペースに更新している本ブログなのですが、またもやマーティンに関する記事をみっけたのでなんか訳しました。おそらく2015年において、ここまでウィットマーシュを推してるのは当ブログだけでしょうw まあ、今更ウィットマーシュの記事とか誰得だよ的な感じですが、前にマーティン記事を訳したつながりで、なんとなく、という感じのいきさつです。

さて、元記事のライターさんはナイジェル・ルーバック氏で、またも誰やねんって感じなのですが、この人は日本語版のwikiにも記事があるほどの有名ジャーナリスト…だったらしいです。言葉濁したのは、実績は相当なものらしいですが、どうもなかなかお年を召された方のようで…。wiki見ても名前の挙がってくるドライバーが、ヴィルヌーヴ(ジルのほう!)、ロズベルグ(ケケのほう!)、セナ、プロストなどなど。あまり現役感はないような感じがします。

まあそんなナイジェルさんの記事なのですが、なんともマーティン愛にあふれております。誤読したせいではないと思いたいのですが、自分が読んだ限りでは、とにかくマーティンはきっといつか戻ってくる!と、どこか信じたくてしかたのないご様子。いやはやどうなんでしょうかねえ?まあ、というか、友人へのはなむけとして正しい書き振りといったところでしょうか?

そんなわけで、誰得マーティン記事第二段です。★はアヤシイ訳の特にアヤシイところ。



マーティンは今どこにいる?


先週は楽しい週だった。モーターレーシングと関係ない場で、偶然マーティン・ウィットマーシュに会ったのだ。彼とは2014年年初のマクラーレンの宮廷革命*1以来だった。かなり後味の悪い形で彼は仕事場を追われ、その後ロン・デニスが再び手綱を握ることになった。


すべて取締役会議で起こったことだった。「ロンは私に彼が何をするつもりなのか言ってきた。そして5分もしないうちに、私はあの建物から出ていたよ。」


その日以来、F1のパドックでは彼はすごく惜しまれ続けてきた。とりわけ私を含むジャーナリストには。というのも、われわれは彼のユーモアセンスを楽しむだけじゃなく、彼の実直さを高く評価していたからだ。ウィットマーシュはひとたび裏切らない人だと判断すると、彼は実に率直に話をするのだった。そしてF1ではそのような人はめったにいないのだ。*2


彼に再開した後、私は2012年の夏に少し話したときのことを思い出した。「今年で私はF1二十四年目だ。」マーティンは言った。「これ以上ないくらいすばらしい時間だったよ。自分がやってる仕事を私は愛しているからね。マクラーレンの4代目のチーム代表になれたことを心から誇りに思うよ」「でも、それが私を規定することにはならないだろうね。奇妙なことだが、私は思うんだ。ロンは未だに、私が必要とするよりもあの職を求めているんじゃないか…」


「とはいえ私はかなり運命論者だ。もし私がF1から明日追い出されるとすれば、24時間はショックを受けるだろう。でも同時に楽観主義者でもある。だからそれを乗り越えるだろう。エアロスペースでファンタスティックな10年間を過ごし、それを愛した。そしてこの業界に入ってきた。なんの後悔もないよ」


ロンは、われわれはいまなお友人だと断言した。しかし、私はそれはかなり疑わしく思っていると言わなければならない。だが最終的には金銭面での和解案も合意に達し、ウィットマーシュは二度と働かなくて済むという満足なポジションにいる。


ロス・ブラウンが2007年のギャップイヤーにしたように、マーティンと彼の妻は昨年の多くを旅行してまわり、とりわけボルネオで人類学者をしている娘のところにたずねたりすることに費やした。そこで彼の娘はオランウータンに関するプロジェクトで働いているのだ。彼は言っていたのだが、それは彼の心にはとてもいいものだった。しかし、彼はF1への愛を失ってはいなかった。


「最初は辛かったよ。実際のところ、わたしはかなり意識してテレビを見ないようにしていた。それは本当に生々しいものだったからね。でも今はもうそれの段階は通り過ぎたよ。私はこれからもずっとあのスポーツを愛するだろうし、マクラーレンのこともそうだ。もう一度先頭に立つ彼らが見たいよ…。」


07年末に、紛糾した状況の中チームを去ったフェルナンド・アロンソに再加入する話を持ちかけたのは、ウィットマーシュその人だ。2013年秋のことだ。「確かに当時問題があったことは間違いない。しかし、結局のところ人は誰も常に最高のドライバーを保持することを考えるものだよ。私の関する限り、それはフェルナンドだ。」


ウィットマーシュが免職となり、デニスが責任者に返り咲いたときには、アロンソマクラーレンに戻るチャンスは水面下のうちに潰えたかに思われた。しかし、昨シーズン、エリック・ブーリエが助けとなり、アロンソの復帰を説得した。マーティンはこの復活した同盟が最後には成功することを疑っていない。


彼がその一部となることはないだろうが、おそらくいつか再びF1にかかわるような日は来るだろう。しかし、彼は、今はまったく新しいチャンレンジの最中だ。彼はアメリカスカップで勝利することに邁進しているベン・エインズリー・レーシングというチームのCEOなのである。一緒に仕事をする仲間には、開発のコンサルタント役としてかかわるエイドリアン・ニューウェイがいる。彼とウィットマーシュはマクラーレンで長年ともに働いてきた。そして、もしこれが彼の決断における大きな役割を果たしていたならば、なんにせよこの道に傾いていったであろうことを彼は認めるだろう。「ベンとミーティングをしたよ。われわれはお金については話してさえいない。30分もしないうちに、私は自分がそれをやりたいのだということを知ったよ…。」


F1にいたころのウィットマーシュについて私が抱いていた印象として、彼はマクラーレンが成功するのを見たがっていただけではなく、F1が全体として栄えてほしいと考えていたというものがある。私を信じてほしいが、こういうことはそうそうあるものではないのだ。彼はエンジニアリングの点では、絶対的な純粋主義者だったけれども、後にそうした見解からあるいはカムバックすることを認めた。つまりファンの関心は無視されるべきではないということを受けいれるという点においてだ★*3。「例えば、私はトラクションコントロールを支持したかもしれない。それが車をより効率的にするからだ。」彼はかつて私に言った。「でも他方で、観客がそれを好まないわけも理解できる…。」


マーティンはまたF1の世界選手権の構成についても強い見解を持っており、オーナーがバーニー・エクレストンと恐ろしいCVCキャピタルパートナーズ*4の金銭的要求を容認することがもはやできなかったという理由でインディアナポリスでのグランプリがカレンダーから消滅したことにも腹を立てていた。「われわれはアメリカを無視するべきではない。」彼は言った。「プロモーターの手にすべてをゆだねて、レースをして盛り上げるためにもっともお金を多く払うつもりなのは誰なのかについてだけ考えるのではなく、おそらくはFOTAがレースをサポートする申し出をして、われわれは戦略的にアメリカに打って出るべきなのだ…。」


ああ、そうだ、FOTAとは、すなわち、悲しいことに短命だったフォーミュラ・ワン・チームズ・アソシエーション(Formula One Teams Association)のことだが、ウィットマーシュはそこでは多く屋台骨の役割を果たし、初代代表だったルカ・ディ・モンテゼモロが退任した後にその役職を引き継いだのだった。2009年3月、FOTAがはじめて開いた記者会見では、とても楽観的な雰囲気があり、ルカは演説の最中次のように言った。「確かなことは、F1における分割統治の時代は終わるということだ。」


残念なことに、誰もエクレストンに言わなかったし、そして誰も二度とは言うことはなかった。エクレストンはいつもこの方針をすばらしく成功を収めるものだとわかっていたのにだ★*5。「財政上の誘惑」に直面して、ディ・モンテゼモロのFOTAへの情熱はあっという間に消えうせた。レッドグルがバーニーに買収されるやいなや、フェラーリもまもなくそれに追従したのだった。


ウィットマーシュはFOTAの存続のために懸命に動いたが、全員の合意なくしては、その力の基盤は失われてしまう。ちょうどエクレストンの意図したようにだ。私はいつもこの崩壊がF1にとって酷くよくないものだと考えてきた。現在、われわれが有しているのはF1ストラテジーグループだ。この組織は、反対に、その主張のすべてに対し力を持っているが、たった数チームの利益しか代表していない。


ウィットマーシュはいつかまたF1のために働くのだろうか?「ありえないことではない。」彼は言った。「しかし、今のところ、私はF1にもどりたいと言うことはないだろう。」




いや~もうF1には戻ってこないんやないの?*6



☆個人的単語リスト
function=会合、式典、催し物
unsavoury=不味い、胸が悪くなるような
whereupon=その結果
rein=手綱
board meeting=取締役会議
not least=特に、とりわけ
candour=率直さ
assertio=断言、主張n
back then=その当時
countenance=支持する、認める
incumbent=現職の
step down=辞任する
inaugural=開会の
divide and conque=分割統治r
evaporate=蒸発する
buy off=買収する
follow suit人のまねをする, 先例に従う
unanimity=全員一致
demise=崩御、死亡

*1:palace coup.ウィットマーシュOUT、デニスINのアレのこと

*2:you don’t get many of those to the pound. これ意味がよく分からなかったので調べてたら面白いサイトを見つけました。よく分からない英語のフレーズをネイティブに直接質問できる掲示板、みたいな感じでしょうか?→http://forum.wordreference.com/threads/you-dont-get-too-many-of-them-to-the-pound.1262109/

*3:Although an absolute purist in the engineering sense, he admitted that he later came back somewhat from that position, in the sense that he accepted that the interests of the fans should not be ignored.

*4:F1の商業権を持つ会社(この会社のトップがバーニー)の株の大半を持つファンド、らしい。まあざっくり言えば、バーニーとこのCVCがF1を仕切ってるってことで…いいの?

*5:Sadly, no one had told Ecclestone, who had always found this policy highly successful, and did so again

*6:むろん戻ってきてくれる分にはwelcomeですが!

トゥルーリによるアロンソ――アロンソはブレない?

なつかしのトゥルーリさん登場してなんかアロンソのキャラについて語ってるらしい、ということで訳しましたよー。もちろん個人的にはバトン派なのでトヨタよりはホンダなのですが、トゥルーリもなんという印象深いドライバーでしたよね。チョンマゲとかワインとか「情熱のトヨタリアン」とか。

でまあ元記事の趣旨はアロンソが勝てる勝てないってとこなんですが、まあそれはどうでもよくて(だってそんなのわからないじゃん)、やっぱ気になるのはキャラ評じゃないですか。まあアロンソのキャラってよく語られてて、世間でどう言われてるかをここで自分が改めて書くこともないと思うんですが、じゃあ結構昔のチームメイトのトゥルーリから見たらそれはどうなのか?ってとこが特に気になっててですね、それで読んでみたら、なんと!ものの見事にほかの皆様と変わらぬ印象のようでw…アロンソよ、さてはおぬし若かりしころから一貫しておったのか?

そんなこんなでいつものとおりいい加減な訳です。★のとこに特に注意を。訳のお直しコメント大歓迎です。っていうか、バトンについても一瞬チームメイトだったわけだしなんか語っておくれよー



フェルナンド・アロンソはもうF1で勝てないかもしれないと考えるヤルノ・トゥルーリ

元チームメイトのトゥルーリアロンソのF1での将来について思うところを語る

フェルナンド・アロンソルノーでの元チームメイト、ヤルノ・トゥルーリは、二回のワールドチャンピオンは残りのキャリアにおいてもう二度とグランプリに勝てないかもしれないと考えている。

このスペイン人のマクラーレンへの移籍は、それゆえひどく落胆させるものだった。そして、アロンソはこの英国チームの後には引退することになるだろうとのアロンソの声明*1があったので、彼が真に競争力のある車にはもう戻ってこれないということもありえる。

そのように、トゥルーリアロンソが引退する前に勝利をひろうチャンスについて悲観的だった★*2

アロンソがレースでかてるか、もしくはチャンピオンになれるか疑問に思う。」トゥルーリは言った。

マクラーレンはすぐには問題を克服できないだろう。だから、次の年もトップ集団にはたやすくは追いつけないと思う。」

二人はかつてルノーの栄光の日々において、かなりの時間をともにすごした。トゥルーリは、同僚としてアロンソについて率直に所見を述べた。

「僕はルノーではフェルナンド・アロンソとはとてもいい関係だったよ。第一に、いいドライバーと付き合っている★*3。彼は自分が勝てると分かっているし、勝ちたいと思っている。そして第二に、彼は仕切りたい感じのタイプなんだ。それはルノーでは良かったのかもしれない。卓越した存在感をもつドライバーを必要としていたから。」

「でも時にフェルナンドと付き合うのはタフだ。これは大変な体験だし、契約の苦しい側面だ。ドライバーとチームは折り合いをつけ、チームの状況を改善させるべきだ。」

「フェルナンドは良いチームプレイヤーだ。でもチームもドライバーもともに正しく協力しあうことが必要で、さもないと、彼は問題の種になってしまうのかもしれない。」

誰もアロンソの能力を否定することができないが、最高のドライバーでさえ、もし車が水準に達していないなら、決して勝つことはできない。

「先を行くチームも眠ってたり待ってたりしているわけじゃない。彼らは働き続け進歩し続けるだろう。」トゥルーリは続けた。

「レギュレーションの大きな変化やフェラーリがしたようなことがあれば、違うのかもしれない。彼らは状況をすごいやり方でひっくり返した。僕はそんなこと想像もしなかった。」

「なんでもあり得るんだ。でも僕は心配だ。フェルナンドの状況は勝つには理想的じゃない。僕が間違ってることを望むよ。」

マクラーレンは良いチームだ。でもマクラーレンフェラーリメルセデスよ戦っている。彼らはマニュファクチャラーだ。ここが大きな違いを生むところだ。」



こんな時代もありました。*4


☆個人的単語リスト
be set to=~することになっている、決まっている
get on top of=~の上に乗る→~を支配する、征服する
candid=遠慮がない率直な
or else=さもないと
up to scratch=水準に達して

*1:あれ、そんなこと言ってましたっけ?最近ニュースも全チェックとかしなくなったんで(←昔はやってたんすよw)見逃したかな?ってまあアロンソフェラーリのときもおんなじこといってましたがw

*2:As such, Trulli was cautiously pessimistic about Alonso’s chances of picking up another race victory before he retires. As suchとcautiouslyがうまくはまらない…

*3:Firstly,you are dealing with a good driver.このyouってなんなん?…基礎からしてなってないなあ自分

*4:いやまあ、自分は当時F1見てなかったのですが。…しかしこうぼちぼち新参な感じの人間からするとなんとも致命的に残念な個性的なレーシングスーツですねえ。バックの「100%るのー」ってのもイイカンジです!

SKY:ライコネン&ベッテル対決を検証する

ベッテルライコネンに関する記事をSKYのサイトで見つけたので翻訳しました。

元記事はマーク・ヒューズ氏によるもの。彼は昨年のアロンソフェラーリ離脱騒動でとても興味深い記事*1を書いたことでも話題になった著名なジャーナリスト。って例によって自分もよく知らなかったのですが、どうやら向こうでは賞もいくつかとってたりもする名の知れた方だそうで。もちろんかの騒動に関する彼の記事については、向こうでも「なんでさも自分が同席したかのように書いてんのや!アヤシイ!」的な反応もありで真偽のほどは自分にはわからないのですが、ともかくも力のある書き手であることは分かります。

さて、これを読むと、今年のファラーリは本当にアリソンカーなんだなという感じがしてきますね。ライコネンがいた頃のロータスそのままの特徴を備えた車、とにかくタイヤに優しい。そして今年は、そんな車にライコネンだけじゃなく、ベッテルが乗っていて、ベッテルはそのスタイルゆえに、ワンラップではさほど強いようには見えなかったアリソンカーで速さを見せている。他方ライコネンはレースで強い…個人的にはぼちぼち面白い文章でした。難しかったけどw

それにしても、主に自身の能力上の問題なのですが、なんとも日本語に訳しづらい文章でした。特にやばそうなところは★ついておりますが、それ以外も心ならずもかなりごちゃっとした感じになってしまいましたがどうかご容赦をば。


ライコネンベッテル対決を検証する――2015年のフェラーリが二人に合っている理由

SKYF1のマーク・ヒューズが、フェラーリチーム内の優越権争い、SF15-Tがセバスチャン・ベッテルキミ・ライコネンの二人に合っているわけ、そしてパフォーマンス向上をもたらしている一目では分かりにくい変化について検証する。

フェラーリドライバーのセバスチャン・ベッテルキミ・ライコネンのパフォーマンスはシーズン開幕四戦において特に輝いている。


これまでの優れたドライバーたちと同じように★*2、優秀なドライバーを比較するときのその差というものは、なんらかの能力における重大な差によってというよりは、競争力に乏しい車★*3をいかにうまく運転するかという点によって、語られる。いつの日も変わらないことだ。これは現在の両フェラーリドライバーの比較においては明らかだ。ちょうど昨年からの改善がまさにそうである。


両ドライバーは、SF15-Tでは、それぞれ昨年のレッドブルRB10とフェラーリF14Tよりもうまく自身の力を発揮できている。その差は特にライコネンにとっては大きいものだった。というのも、ライコネンの2014年の車は、ベッテルの車よりずっと欠陥の多かったからだ。とにかくも、2014年は二人ともども、そういった車の欠陥をに対してドライビングを適応させていくことが――チームメイトのダニエル・リカルドフェルナンド・アロンソが可能だったようには、できなかったことを露呈してしまった。


テクニカルディレクターのジェームズ・アリソンが製作した車は、より素直な特徴をもっており、彼らは再び自らの持ち味をみせることができている。アリソンはこのフェラーリの車において、先進的で、扱いやすく、ピークレベルよりはダウンフォースの一貫性を優先させたのだった。彼らはともに、昨年の実績よりもずっと自身のポテンシャルに近いレベルでドライビングしている。


二人の昨年チームメイトもみな今年のフェラーリに乗っていたら、その差がどのようになるのかは、確かなことは分からない。しかし、あらゆる差が昨年よりはずっと小さくなると誰もが思うことだろう。


昨年のリカルド‐ベッテルアロンソライコネンの間のパフォーマンスの差は、彼らのポテンシャルの極限によるものというよりは、ベッテルと、とりわけライコネンに見られた、適応力の不足分のせいだった。


フェラーリでは、レースの真っ只中にこの部分が顔を出すのが何度も見られた。すなわち、ハードあるいはミディアムから、ソフトないしスーパーソフトにタイヤが交換されると、ライコネンアロンソに対して不足していた部分がかなり解消され、時には完全に克服されもした。もしそれが彼らのポテンシャルの限界によるものだったのなら、両者のギャップは変わらなかっただろう。


偉大なドライバーであることの一側面に、さまざまな特徴の車に合わせていく能力というものがある。それは、アロンソがとりわけ優れているところだ。ベッテルライコネンは、昨年この点で苦しんだせいで、真の偉大なオールラウンダーであるとは言いにくくなっている。しかしそれは、その種のドライバーが、車に要求するものがその手の中にあるときでも、偉大なドライバーと評するに足るレベルには達しないと言うべきものではない。そもそもベッテルライコネンはそのキャリアにおいて、何度も何度も偉大なドライバーと呼べる水準に達してきた。


今年のフェラーリのおかげで、彼らは昨年示すことが可能だった水準よりむしろ、自らのポテンシャルの方にずっと接近できている。それを背景に、彼らがお互いをどう比較するのかというの特に興味深い。今までのところ、ベッテルは予選においては、より強力なパフォーマンスを発揮することを証明してきたが、ライコネンは、バーレーンのレースでは間違いなくベッテルより強かった。ライコネンベッテルよりもタイヤを長くもたせて、結果として容赦のない速さを見せることができた。


ライコネンがそのレースで強かった理由は、彼が予選で奮わないのとまったく同じで、つまり、彼のタイヤへの入力が少ないドライビングスタイルによるものだ。それはタイヤに伝わる力を最小にする。それは、まさに本戦の日に求められるものであるが、一周のアウトラップのうちに必要なタイヤの熱を発生させるのに苦労する車の場合、予選では問題になりうる。これこそがSF-15Tの特徴のひとつであって、おそらくは事実上の主要な弱点である。


最適なタイヤ熱を生み出すには、複雑なメカニズムが働いている。もしトレッドが十分に路面にグリップしているのならば、生み出された熱はタイヤの中心まで浸透する。こうして最適な中心部の温度が生み出され、それによってタイヤが伸縮し、そこからグリップを得るのだ。


もしトレッドと中心部の温度が均衡しているのなら、タイヤにとっては嬉しいことでその耐久性は最大になるだろう。もしトレッドが路面を十分に捉えていない場合は、荷重は中心部における最適な熱を生み出すのには十分ではなく、タイヤは、最高の性能を発揮するには硬すぎる状態にとどまってしまうだろう。このことは次にはトレッドが十分にグリップしないことにつながり、循環する。


もし車がタイヤを過不足無く機能させているならば、タイヤを均衡に向かわせることは可能だが、それには数ラップかかるかもしれない。これがフェラーリSF-15Tが今まさにいる状況だ。そのせいで、一周で最高の状態にするのがトリッキーな車になっている。多量のエネルギーを注ぎ込むドライビングスタイルが要求され、最適な温度にもっていくためにはしばしば、高い荷重をかけなければならない。しかし、ひとたび最適な状態に達しタイヤが均衡すれば、低いエネルギー入力で耐久性を最大化できる。


ベッテルのスタイルは、ライコネンよりステアリングやスロットルの操作の両方ともにおいてずっと入力が大きい。それゆえライコネンが上海とバーレーンにおいて、アタックラップの最初のほうですごく神経質になって苦しむのをわれわれは目撃することになったのだ★*4ベッテルはアタックラップを始めるまでにうまく熱を生み出すことができ、それが今までの予選での勝利のガキになっている。


しかし、バーレーンのレースでのチャレンジは、速く走れるソフトタイヤを可能な限り最大限長く延命することだった。ここにおいて、ライコネンは明らかに優れていた。あまりにすばらしかったので、第一スティントの終わりまでには、ベッテルのせいで遅くなってると文句を言っていたほどだった。


選択されたタイヤのコンパウンドが、これからのトラックのレイアウトが要求するものとどれくら適合しているかが次のことを決定するだろう。a) フェラーリメルセデスに対してどれだけ競争力があるか b) ベッテルライコネンの戦いがどうなるか。


ドライビング比較のやり方というのは、F1ほど複雑なものにおいては、同じままであり続けたりはしない★*5。ゆえに、実際のところのドライバー間の相対的なパフォーマンスというものは、常に変わり続けている。正確に読み解いていくには、過度に硬直的な態度を戒めることが大切だ。


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この二人も早く拗れて泥沼のアツいチームメイトバトルに突入しないかなーw


☆個人的単語リスト
invariably=いつも、常に
not so much A but B=AというよりもむしろB
stark=荒涼とした、過酷な
benign=親切な、温和な
backdrop=背景
twitchy=引きつった、神経過敏な

*1:F1通信様が訳されております→h ttp://blog.livedoor.jp/markzu/archives/51960413.html 関係ないですが、個人的にはF1通信様はめっちゃ尊敬しております。あとベッテルニュース様とかもすごいですよね…

*2:As ever with drivers of this calibre.

*3:dovetails with the traits of the car.「車の形をした蟻継ぎ」ということでしょうか?っていうかdovatail=蟻継ぎってなんすかwみたいな感じでよく分かりませんが、まあ話の筋的にはイマイチ車をいかにうまく走らせるか、という感じっぽい(たぶん)ので、もはやがっつり意訳することにしました。

*4:we saw in both Shanghai and Bahrain how early in the lap Raikkonen struggled with big twitchy moments.

*5:Because the mechanisms driving comparisons do not remain static in something as complex as F1