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SKY:いかにしてジェンソン・バトンはロン・デニスとのポーカーゲームに勝利を収めつつあるのか

またもや大変な週末でしたね、日本GP。アロンソの無線とかすごかった…。もちろん、デニスも言ってたように、ああいうことを世界に流れてしまうかもしれないチーム無線で言ってしまうのは望ましいことではないのでしょうけど、気持ちはやっぱり分かる。アロンソはプライド高いから、いろいろ許せなかったんでしょうね。


さて、今回訳したのは、先週すごい勢いでメディアをにぎわせていた、というか当ブログも騒ぎまくったJB引退説に関する、マーク・ヒューズさんによる分析。もちろん、JBオタなので、ジェンソン残留を心から信じていた自分ではありますが、でも他方で最悪の事態も覚悟してはいたんですよね、あの報道が主要新聞社から一斉に出たときは。直前のシンガポールGPも正直ジェンソンは揮わなかったし。


ただ、その後、マクラーレン側から、ジェンソンをキープしたい報道が出たあたりから、おおお!?となってきて、今となっては、普通に残留が濃厚そうな雰囲気ではないですか(たぶん*1)。これはどういうことか、自分もいろいろ考えていたのですよ。JB引退説に関しては、英国新聞社が示し合わせて同内容のウソ記事をでっち上げるとは思えないので、意図的かはともかくとして、バトンはそのようなことを新聞社の記者の前で実際に語ったのは事実なのではないだろうか*2。では、もしそうなら、なぜジェンソンはそんなことを言う必要があったのだろう…。そのあたりのことをマーク・ヒューズ氏が語っています。原文はこちら。事態を説明する一つの説としてよろしければ。


ジェンソン・バトンロン・デニスとのポーカーゲームに勝利しつつあるのはいかにしてか

マクラーレンで行われている、契約をめぐるポーカーの勝者はジェンソン・バトンとなりそうだ。この高い掛け金のゲームに、SKYF1のマーク・ヒューズが迫る。

ジェンソン・バトンは、給料ダウンを試みるロン・デニスからのプレッシャーに対して、鮮やかなポーカーゲームを繰り広げた。

バトンは、引退という脅しを使った。むろん、それが前もって準備されていたのかは彼にしか分からないが、彼は、大胆にもデニスを相手にして、契約破棄できるものならやってみろ、とけしかけたのだ。契約破棄は、バトンに対し、現在の合意の下、2年目に関し契約されている条件での支払いをしないようにするために必要なことだった。バトンは、引退の憶測を否定しないようにして、巧みにメディアを利用した。この脅しをするために準備を整えていた、という疑念をデニスの心に植えつける目的である。


バトンは昨年マクラーレンと2年契約の交渉をしており、それは総額1800万ポンド(2015年は600万ポンド、2016年は1200万ポンドである)だと考えられている。よく知られているように、この支払いは、「後積み」である。すなわち、最大の分け前は2年目に来るのである。そして、契約破棄はマクラーレン側にあり、これにより、マクラーレンは、1年目の終わりで契約を無効にできるのだ。このやり方だと、ドライバーの働きが悪いと感じた場合、チームは守られる。なぜなら、チームは、バトンの2年目に対しては何もコミットしてないからだ。


しかしながら、もし、チームが契約破棄をしようとした場合、それをドライバーに知らせなければならない期限があるものだ。今回のケースでは、それは9月30日、すなわち、今週の水曜だと考えられている。


マクラーレンは、資金面で難しい局面にあるので、理想を言えば、ジェンソンをキープしたいが、しかしかなりの報酬カットをした上でそれをしたい。マクラーレンの当初の2016年予算は、今年コンストラクターズチャンピオンシップで5位あたりでフィニッシュすることを想定していた。しかし、現実は9位にとどまりそうである。両者のチーム収入における差は、1500万ポンド程度だ。すると突如として、バトンの給料の600万ポンドの増額がとても高いものに見えてくる。たとえそれが、チームメイトのアロンソのたった半額程度の給料であったとしてもだ。なお、アロンソは、三年契約で、その給料のは大部分はホンダによってまかなわれている。


デニスがバトンの給料を下げようとしたのはこのような背景があってのことである。それが含意するのは、彼が契約破棄に手をつけ、現在の合意を無効にしようとしていたということであろう。こうなるとデニスは、新規の、そして安い契約をバトンと交渉する自由を手にすることができるのだ。それに対するバトンの反応は、強行的なものだった。つまり、実質的に「もしあなたが契約破棄しようというなら、私は新契約の交渉は拒否して引退します。」と言ったのだ。


もちろんデニスは、それにかまわず破棄に手をつけることができたし、そのようにして、バトンの引退を受け入れるか、あるいは、本気で言っているのではないということに賭けるか、の二つに一つだとすることもできただろう。だが、このシナリオでは、バトンは準備もなく脅しをかけているのだとデニスは考えている、という立場にバトン自身は立てなくなる。それゆえバトンにとって、メディアが、彼は本当に引退を考えていると信じていることはとてもうまく働いている。彼らは偶然にもバトンの交渉戦略の一部となってしまったのだ。


なぜデニスは、単純に破棄に手をつけて、バトンが引退することを受け入れようとしなかったのだろう?一部は、バトンがドライバーとしてチームにもたらすものによるが、それだけでなく、彼の非常に高いマーケティング面での価値のせいもある。その名前とイメージの商業的な価値は、彼に取って代わられる若手のドライバーのどちらよりもはるかに大きいものだ。通常、才能のある若手は、瞬く間に市場価値を持つことができる。成功によってだ。しかし、マクラーレン・ホンダのパートナーシップは、早い段階では競争力がないので、成功は当分の間は保証されない。この独立採算のチームが、後援を集めるための良いチャンスを得るためには、バトンの存在はきわめて貴重だ。


デニスは完璧にバトンの手の中で踊らされていたのだが、この問題を一層複雑にしているのは、フェルナンド・アロンソのチームでの将来に関するものである。アロンソの将来対しては、、マネージャーのフラビオ・ブリアトーレからのコメントと、さらに日本GP中の日曜に、ホンダ所有の鈴鹿サーキットで彼がホンダのパワーの欠如に対して発した苛立ったコメントによって疑問符がついたのだ。


もしアロンソが割り当てられていた契約期間を前にして離脱することを決め、さらにバトンまで引退したら、この独立採算のチームは無名ドライバーのラインナップになってしまうだろう。


マクラーレンの現在の苦戦のすべてを考慮するにしても、二人のチャンピオンを持つドライバーラインナップは、その栄光の日々との最後のリンクのひとつである。マクラーレンの商業界での地位のためには、バトンの虚勢に対してコールをしないことが、ひどく必要とされるのだ。


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「もう一年乗るぜ!」(願望*3


☆個人的単語リスト
stake
〔競争の〕賞金、〔賭け事の〕賭け金
deliver on
~を果たす、~をうまくやり遂げる
dare
あえて[思い切って・恐れずに・平気で・大胆にも]~する、〔人に〕~するよう挑む[けしかける]
initiate
〔通例重要なことを〕始める、開始する
refute
〔考え・仮説・発言・意見・申し立てなどに〕反論する
instill
染み込ませる
lion's share
最大の分け前
i.e.
すなわち
backdrop
〔劇場の〕背景幕 ◆【同】backcloth
implication
暗示、含意、〔物事から〕推測されること[結果]
play hardball
強硬手段[強気な態度]をとる
backing
援助、後援、支援
complicate
複雑にする、悪化させる
short of
~が足りない[不足している]、~に達していない、~の手前で

*1:いや絶対w

*2:尾張正博さんのこういった記事もありましたしねー

*3:残留発表してほすいぃぃぃぃぃぃ