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BBC:ホンダエンジンがマクラーレンにとって悪夢であるわけとその解決法

またもだいぶ間が空きましたが更新です。先日のイタリアGPはレース以外がアツかったですねえ。アロンソのストレートでめっちゃ遅れるんや!!発言があり、Daily Mailのマクラーレン新井氏の更迭求める!?報道があり、まったく盛りだくさんでしたw

さて、今回は、そのあたりに関して、本ブログおなじみの一人、アンドリュー・ベンソンさんがまた記事を書いていたのでその翻訳です。いやまあ、ベンソンさんの記事に付けられたネット民コメントまで拾って訳したんだから、ちゃんと記事として書いているものをスルーしてはいかんだろう、という義務感的ななにかからです。しかし、われながら、このブログの推しメンに、マルドさん、マーティンに引き続き、ベンソンさんも加わりそうな勢いですなこりゃははは

原文はこちら。なお、技術的なお話はさっぱりですので、訳文もその部分に関しては特に「なに言ってんだコイツ」的なおかしさになってるかもしれませんので、どうかご容赦ないしご指摘を。

ホンダエンジンがマクラーレンにとって悪夢であるわけとその解決法

マクラーレン・ホンダのドライバー、フェルナンド・アロンソジェンソン・バトンは、シンガポールをポイントを稼ぐための今シーズン最高のチャンスの一つだとこの数ヶ月間言い続けたきた。

この苦境に立たされているチームがベルギーとイタリアの2レースでひどい成績を出したせいで、モンツァの予選後の記者会見は嵐のような激しさを呈した。そこでは、ホンダのF1責任者である新井康久氏は、エンジンパフォーマンスの不足のために極めて厳しい尋問にさらされた。

バトンは、これまでも状況をよくわきえる人間*1だったが、この事態をもっと大きな視点の下に置こうとしていた。

「2週間後だったら、レースを戦って5位ないし6位を争えるだろうから、この種の論争にはたぶんならないはずだよ。」

それでは、アロンソとバトンは、いかにしてイタリアで15位、16位争いを演じることとなり、しかしまた、どうして翌週のシンガポールではポイント圏の中位というすばらしいポジションを望めるというのだろうか。

マクラーレンと、そして特にホンダの問題を観察して、それを説明をしてみよう。

ホンダパワーの悪夢

マクラーレンの最大の問題は、ホンダエンジンの競争力のなさによるものだということは公然の秘密だ。この日本企業にとっては、2008年以来、これが復帰して最初のシーズンである。

アロンソはイタリアGP週末のこの状況をそのままに語った。すなわち、GPSのスピートトレースの情報を明らかにしたのだ。これは、チームがライバルとの比較分析をするのに使うものである。

「改善する必要があるエリアはたくさんあるよ。」二回のワールドチャンピオンが語る。「でも、このサーキットでは6つのコーナーがあるんだけど、GPS上では、僕らはそのコーナーで10分の2、3秒失っているんだ。三秒ある差の内の残りは、ストレートで見つけなきゃいけない。」

なぜ高速サーキットのモンツァではこれがそれほどにひどいものであり、市街地コースのシンガポールでは影響がほとんどないことが予想されるのか。これを理解するには、2014年にF1に導入された、ターボハイブリッドエンジンルールに苦戦するホンダについて、詳細に説明する必要がある。

少し技術的なものになるだろうが、我慢して付き合ってほしい。その価値があるはずだ。

現行のF1エンジンは1.6リッターV6ターボである。これは、エネルギーの回生を行うハイブリッドのエレメントをもっており、それは2つに分離してはいるが、内部でリンクしている。共にそのままなら捨てられていたはずのエネルギーを活用している。

リアの車軸にリンクしている電気モーターは、MGU-Kで、これはブレーキング時に運動エネルギーを回収し、それを後で使うためにバッテリー内に蓄える。「K」によるバッテリーからのパワーは120kwに制限されている。

MGU-H(熱(heat)を表す)と呼ばれる第二の電気モーターは、ターボチャージャーからエネルギーを回収する。レギュレーションでは、ここからのエネルギー使用に関しては制限がないので、これはフリーなエネルギーと考えることができる。

ホンダの根本的な問題は、最も短い類のストレートを除いて、ストレート全距離にわたって使い続けるだけのエネルギーを得られていないことにある。

これはアロンソとバトンが、長いストレートでは、途中でハイブリッドパワーを使い果たしてしまうことを意味する。それは直接には少なくとも160馬力の損失である。それこそが、スパやモンツァで、彼らがまるでその場にそのまま立ち尽くしていたかのように、ライバルにオーバーテイクされていったことの理由である。

この問題はシンガポール(あるいは例えば、アロンソが5位フィニッシュを決めたハンガリー)ではずっと小さいものとなる。ストレートが短いからだ。だから、「クリッピングポイント」――そう呼ばれているのだ、には至らないかもしれない。あるいはそうなってしまっても、それはストレートの終わり際においてだけだろう。

なぜホンダはこれほどエネルギーが足りないのか?

ホンダはとてもコンパクトなエンジンを作った。空力的アドバテージのために、可能な限り全てを小さくしようというマクラーレンのデザイン哲学の一環である。

しかし、これが、エンジンデザインでの妥協につながった。

エンジンをできる限り小さくするために、ホンダはターボとMGU-Hを一つのユニットにして、それをコンプレッサーとともに収納した。コンプレッサーは、エンジンのシリンダーのV字の中で、空気をターボに送り込むものだ。

これは、先頭を走るメルセデスと似た哲学である。

違いは以下の点だ。すなわち、メルセデスはエンジンの前に大きなコンプレッサーがあり、異例の長さのシャフトによって、後ろにあるターボにジョイントされている。そこから、V字の中に配置されたMGU-Hはエネルギーを回収する。

メルセデスのデザインは、多くののアドバンテージがあり、それは昨年別の記事で詳述した。

ホンダはよりコンパクトなレイアウトである。コンプレッサーをシリンダー列に収めるためだ。メルセデスよりさらに小さくするために求められたことだった。だから、効率性で劣る。その最高回転もまた制限されたものとなる。

この配置のせいで、ホンダは、エンジンデザインを変えない限り、それを大きくすることができない。その実行のためには、F1の複雑な開発制限の元では、今年可能であるよりも、多くのトークンを必要だ。

ホンダのハイブリッドシステムがエンジンの唯一の問題なのか?

ハイブリッドシステムの欠点をだけでなく、メルセデスフェラーリなどの優れたユニットと比べると、ホンダの内燃機関(ICE)も劣っている。

それがどれほどのなのかについては、異論があるところだ。

メルセデスは相当のアドバンテージを持っており、ICEだけで、10~15馬力フェラーリに勝り、ルノーからは50~70馬力もの差をつけていると言われている

新井氏はホンダのICEはルノーよりも20~25馬力ほど上だと信じていると言っていた。ほかのエンジニアたちは、両者のICEはとても接近しており、ホンダはもしかしたら7月のアップデート前の時点ではわずかに優勢だったが、アップデート後には25馬力ほどの差をつけルノーが再度逆転した、と言っている★*2

メルセデスの出力は、ICEから生み出していると噂される700馬力、規制されているMGU-Kの160馬力、そしてMGU-Hからのフリーな電気エネルギーが30-40馬力もあることを考えると、トータルでは890-900馬力ほどあるのだ。

ルノーフェラーリのハイブリッドシステムに関しては、メルセデスと同等の競争力があると考えられており、それゆえルノーは約830-840馬力、フェラーリは880-890馬力程度であろう。

こうした情報の全てをホンダエンジンに当てはめてみると、マクラーレンの問題が浮き彫りになる。

ホンダエンジンは、ICE単独で60-80馬力程度劣っている。加えてMGU-Hのパワーに相当な不足があり、また全てのハイブリッドパワー(Kからの160馬力と、不明だがHが生み出すパワー分)がストレートの所定の距離を超えると失われてしまう。

ホンダは2016年にその問題を修正できるだろうか?

ホンダは今年残りで、内燃機関のパフォーマンスと、ハイブリッドシステムの効率性の向上を図る計画である。しかし、問題はこれほどに根本的なものなので、改善はどれも限られたものだろうし、大きな進歩が期待されるのは来年になってからだろう。

ホンダが来シーズンに向けて、エンジンを再デザインできるかどうかが大きな問題である。ターボ、コンプレッサー、MGU-Hのレイアウトを、要求される効率性を満たすものにしなければならない。

「そこが開発の目標だ。」新井氏は言う。「コンプレッサーが、今解決を試みている最大の課題であることは把握している。シルバーストン、スパ、モンツァでそれがどれだけ難しいものだったのか、そして必要な作業量がどれほどのものかもわかっている。」

「データを見ているので、ライバルがなにを開発していて、それがどの程度なのかもわかっている。だから、言うまでもなく最低限の目標はそこだ。」

マクラーレンに近いいくつかの消息筋は、問題に取り組む際のホンダの緊迫感に、そして自らがどれほど劣っているのかをきちんと把握しているのかという点に、疑念を抱いている。この疑念が正しいのかどうかは、来シーズンにならないとわからないだろう。

車体についてはどうか?

シンガポールでは、ホンダのデプロイメントの不足はターン5からターン7の間のコース最長のストレートの間でしか問題にならないだろうし、もしかしたら、そこでさえ問題にはならないのかもしれない。

しかし、もしマクラーレンモンツァの6つのコーナーで0.2-0.3秒失っているのならば、23のコーナーを擁するシンガポールでは、その差はコーナー数に比例して大きくなるであろうことは明白だ。

エンジニアたちは、マクラーレンをトラック上で4番目か5番目に優れたシャシーと見ている。すなわち、メルセデスレッドブルトロロッソの後ろで、フェラーリに勝つか負けるか、というところである。

しかし、これは、マクラーレンは車体に問題がないといっているのではない。

MP4-30は、上位の他の車体に比べて、ドラッグが多く、ダウンフォースは少ない。また、コーナーの出口のトラクションに苦しんでいる。

近年、マクラーレンは実際に使用可能なダウンフォース量よりも最大値を追求する方針を採って苦戦している。

これによる問題は、最大のダウンフォースレベルで測られる理論値においては、クルマは速いのだが、実際にはドライバーはトラック上でその全パフォーマンスを引き出すことができないということである。

なぜ引き出せないのか。その理由は、空力を追求して気流が大きく加工されると、それが他のなにものかに妨害されることに対して敏感になってしまうことにある。気流が妨げられると、突然グリップを失ってしまい、それがひいてはドライバーの自信をも損ねてしまう。

もっともうまくできた車は、「フレンドリーな」ダウンフォース、と呼ばれるものを追求したものとなる傾向がある。それは、理論的な最大値は低めなのだが、ドライバーが実際に活用できるダウンフォース量とその時間がより多くなっているものであり、それゆえに、車の空力学的土台は安定している。

この二番目の哲学は、レッドブルが成功していた時代のやり方で、メルセデスが今現在依拠しているものでもある。

マクラーレンは、今年初め、このアプローチも採用すると言っており、自身がなにを間違えていたのかも認識していた。

しかし、内部関係者は言う。シャシーが全体的なダウンフォースを欠いていることが明らかになって以来、チームは旧式の悪しきやり方に戻してしまい、現実的なパフォーマンスよりも理論値を追求するようになってしまった、と。

これは、なぜマクラーレンレッドブルメルセデスに比べてとても硬いサスペンションで走っているのかをほとんど説明している。もしエアロの土台がもともと不安定なものであるのなら、車のピッチを可能な限りコントロールしたくなるものなのだ。気流が「ストール」してしまい、ダウンフォースが失われてしまう状況を減らそうするためである。

メルセデスが先鞭をつけ、シーズン半ばのアップグレードでレッドブルがうまく追従した最新のフロントウイングの哲学に、マクラーレンがいまだキャッチアップしていないことも注目すべきことだ。

展望

今年の車のレイアウトは、マクラーレンのチーフエンジニアのピーター・プロドロモウが昨秋レッドブルから加入する前に、コンパクトなホンダエンジンのレイアウトを軸として考案されたものだ。

ホンダはより大きなコンプレッサーと改良されたターボ、MGU-Hをデザインしており、基本的には同じ構造が保持されたエンジンになるのだろう。パッケージをできる限りコンパクトにとどめる、というねらいである、★*3

プロドロモウは他方で、マクラーレンの車体デザインの欠陥の根絶に取り組んでいる。焦点は、フロントの空力と、車体周りに強い気流をつくり、リアのホイールとフロアにそれを流すことだ。後者もとてもパフォーマンスに重要なもので、レッドブルが伝統的に秀でていた部分である。

マクラーレンとホンダのトップはともに一つのチームであるという主張を公には堅持しているが、内部で緊張が生じているとの噂が出始めている。

マクラーレンが35年でワーストのシーズンを過ごしているこの状況では、これは驚くべきことではない。マクラーレンとホンダはあまりに深く泥沼にはまっているので、彼らは、時折そこでおぼれてしまうかのように見える。

しかし、たとえ2015年のリザルトでの改善は他の何よりもサーキットレイアウトによっているとしても、チームとエンジンマニュファクチャラーは、自らが期待する場所に自身を引き戻すために2016年に必要なアイデアを、すくなくともいくつか持っている、という感じはあるのだ。


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ア、アロンソのことだからメディア使ってプレッシャーかけてるだけ…だよね(震え声


☆個人的単語リスト
specific【名】仕様(書)、明細(書)、詳述
kinetic【形】運動(上)の、動的な
vee【名】〔アルファベットの〕v、V字形
shortfall【名】不足、不足分、
remainder【名】残り、残余、
objective【名】目的、目標、対象
proportionally【副】比例的に
revert【自動】〔元の習慣・状態などに〕立ち戻る
stall【1自動】行き詰まる、失速する
notable注目{ちゅうもく}に値する[すべき]
around~を中心{ちゅうしん}にして、~の周りに集まって
eradicateぜんめつ}させる
mire沼地{ぬまち}、泥沼{どろぬま}、ぬかるみ
haul【自動】引く、引っ張る

*1:ever the politicianの訳です。politicianってあんまりよくないニュアンスだった気がするのですが…。とりあえず若干強引にニュートラル?な感じで訳しました(ここでバトンを唐突に難癖つけ出すのはヘンかな、との判断で。ファンのひいき訳ではないはずw(たぶん)が、しかし…

*2:※訂正した訳文の方がおかしかったぽいので、最初の訳文に戻しました(2015/9/17)。一応、以前この記事を一度お読みで、かつまた読んでくださる方がいたら、その方のために。ま、そもそも、こっちは、ルノーが上だろう、って言ってる意見になってないと(なってない方に一度訂正してしまったのですよw)、じゃあどこにも異論ないじゃんwってなっちゃって、文脈上もおかしくなっちゃいますよね。一応原文も載せときます。…って別にそんなに難しい文章じゃないはずなんですが、なんか苦戦してますw(「7月のアップデート」ってなんだ?そんなのあったか?って思ってネットで調べても、なにも情報が出てこないのが悪いんじゃっ!)→ Honda was perhaps marginally ahead before an upgrade in July moved Renault back in front by about 25bhp.

*3:Honda is designing a larger compressor and revised turbo and MGU-H into an engine that will retain the same fundamental architecture, with the aim of keeping the package as compact as possible.