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マーティンの思い出 by ナイジェル・ルーバック

ちまちまとマイペースに更新している本ブログなのですが、またもやマーティンに関する記事をみっけたのでなんか訳しました。おそらく2015年において、ここまでウィットマーシュを推してるのは当ブログだけでしょうw まあ、今更ウィットマーシュの記事とか誰得だよ的な感じですが、前にマーティン記事を訳したつながりで、なんとなく、という感じのいきさつです。

さて、元記事のライターさんはナイジェル・ルーバック氏で、またも誰やねんって感じなのですが、この人は日本語版のwikiにも記事があるほどの有名ジャーナリスト…だったらしいです。言葉濁したのは、実績は相当なものらしいですが、どうもなかなかお年を召された方のようで…。wiki見ても名前の挙がってくるドライバーが、ヴィルヌーヴ(ジルのほう!)、ロズベルグ(ケケのほう!)、セナ、プロストなどなど。あまり現役感はないような感じがします。

まあそんなナイジェルさんの記事なのですが、なんともマーティン愛にあふれております。誤読したせいではないと思いたいのですが、自分が読んだ限りでは、とにかくマーティンはきっといつか戻ってくる!と、どこか信じたくてしかたのないご様子。いやはやどうなんでしょうかねえ?まあ、というか、友人へのはなむけとして正しい書き振りといったところでしょうか?

そんなわけで、誰得マーティン記事第二段です。★はアヤシイ訳の特にアヤシイところ。



マーティンは今どこにいる?


先週は楽しい週だった。モーターレーシングと関係ない場で、偶然マーティン・ウィットマーシュに会ったのだ。彼とは2014年年初のマクラーレンの宮廷革命*1以来だった。かなり後味の悪い形で彼は仕事場を追われ、その後ロン・デニスが再び手綱を握ることになった。


すべて取締役会議で起こったことだった。「ロンは私に彼が何をするつもりなのか言ってきた。そして5分もしないうちに、私はあの建物から出ていたよ。」


その日以来、F1のパドックでは彼はすごく惜しまれ続けてきた。とりわけ私を含むジャーナリストには。というのも、われわれは彼のユーモアセンスを楽しむだけじゃなく、彼の実直さを高く評価していたからだ。ウィットマーシュはひとたび裏切らない人だと判断すると、彼は実に率直に話をするのだった。そしてF1ではそのような人はめったにいないのだ。*2


彼に再開した後、私は2012年の夏に少し話したときのことを思い出した。「今年で私はF1二十四年目だ。」マーティンは言った。「これ以上ないくらいすばらしい時間だったよ。自分がやってる仕事を私は愛しているからね。マクラーレンの4代目のチーム代表になれたことを心から誇りに思うよ」「でも、それが私を規定することにはならないだろうね。奇妙なことだが、私は思うんだ。ロンは未だに、私が必要とするよりもあの職を求めているんじゃないか…」


「とはいえ私はかなり運命論者だ。もし私がF1から明日追い出されるとすれば、24時間はショックを受けるだろう。でも同時に楽観主義者でもある。だからそれを乗り越えるだろう。エアロスペースでファンタスティックな10年間を過ごし、それを愛した。そしてこの業界に入ってきた。なんの後悔もないよ」


ロンは、われわれはいまなお友人だと断言した。しかし、私はそれはかなり疑わしく思っていると言わなければならない。だが最終的には金銭面での和解案も合意に達し、ウィットマーシュは二度と働かなくて済むという満足なポジションにいる。


ロス・ブラウンが2007年のギャップイヤーにしたように、マーティンと彼の妻は昨年の多くを旅行してまわり、とりわけボルネオで人類学者をしている娘のところにたずねたりすることに費やした。そこで彼の娘はオランウータンに関するプロジェクトで働いているのだ。彼は言っていたのだが、それは彼の心にはとてもいいものだった。しかし、彼はF1への愛を失ってはいなかった。


「最初は辛かったよ。実際のところ、わたしはかなり意識してテレビを見ないようにしていた。それは本当に生々しいものだったからね。でも今はもうそれの段階は通り過ぎたよ。私はこれからもずっとあのスポーツを愛するだろうし、マクラーレンのこともそうだ。もう一度先頭に立つ彼らが見たいよ…。」


07年末に、紛糾した状況の中チームを去ったフェルナンド・アロンソに再加入する話を持ちかけたのは、ウィットマーシュその人だ。2013年秋のことだ。「確かに当時問題があったことは間違いない。しかし、結局のところ人は誰も常に最高のドライバーを保持することを考えるものだよ。私の関する限り、それはフェルナンドだ。」


ウィットマーシュが免職となり、デニスが責任者に返り咲いたときには、アロンソマクラーレンに戻るチャンスは水面下のうちに潰えたかに思われた。しかし、昨シーズン、エリック・ブーリエが助けとなり、アロンソの復帰を説得した。マーティンはこの復活した同盟が最後には成功することを疑っていない。


彼がその一部となることはないだろうが、おそらくいつか再びF1にかかわるような日は来るだろう。しかし、彼は、今はまったく新しいチャンレンジの最中だ。彼はアメリカスカップで勝利することに邁進しているベン・エインズリー・レーシングというチームのCEOなのである。一緒に仕事をする仲間には、開発のコンサルタント役としてかかわるエイドリアン・ニューウェイがいる。彼とウィットマーシュはマクラーレンで長年ともに働いてきた。そして、もしこれが彼の決断における大きな役割を果たしていたならば、なんにせよこの道に傾いていったであろうことを彼は認めるだろう。「ベンとミーティングをしたよ。われわれはお金については話してさえいない。30分もしないうちに、私は自分がそれをやりたいのだということを知ったよ…。」


F1にいたころのウィットマーシュについて私が抱いていた印象として、彼はマクラーレンが成功するのを見たがっていただけではなく、F1が全体として栄えてほしいと考えていたというものがある。私を信じてほしいが、こういうことはそうそうあるものではないのだ。彼はエンジニアリングの点では、絶対的な純粋主義者だったけれども、後にそうした見解からあるいはカムバックすることを認めた。つまりファンの関心は無視されるべきではないということを受けいれるという点においてだ★*3。「例えば、私はトラクションコントロールを支持したかもしれない。それが車をより効率的にするからだ。」彼はかつて私に言った。「でも他方で、観客がそれを好まないわけも理解できる…。」


マーティンはまたF1の世界選手権の構成についても強い見解を持っており、オーナーがバーニー・エクレストンと恐ろしいCVCキャピタルパートナーズ*4の金銭的要求を容認することがもはやできなかったという理由でインディアナポリスでのグランプリがカレンダーから消滅したことにも腹を立てていた。「われわれはアメリカを無視するべきではない。」彼は言った。「プロモーターの手にすべてをゆだねて、レースをして盛り上げるためにもっともお金を多く払うつもりなのは誰なのかについてだけ考えるのではなく、おそらくはFOTAがレースをサポートする申し出をして、われわれは戦略的にアメリカに打って出るべきなのだ…。」


ああ、そうだ、FOTAとは、すなわち、悲しいことに短命だったフォーミュラ・ワン・チームズ・アソシエーション(Formula One Teams Association)のことだが、ウィットマーシュはそこでは多く屋台骨の役割を果たし、初代代表だったルカ・ディ・モンテゼモロが退任した後にその役職を引き継いだのだった。2009年3月、FOTAがはじめて開いた記者会見では、とても楽観的な雰囲気があり、ルカは演説の最中次のように言った。「確かなことは、F1における分割統治の時代は終わるということだ。」


残念なことに、誰もエクレストンに言わなかったし、そして誰も二度とは言うことはなかった。エクレストンはいつもこの方針をすばらしく成功を収めるものだとわかっていたのにだ★*5。「財政上の誘惑」に直面して、ディ・モンテゼモロのFOTAへの情熱はあっという間に消えうせた。レッドグルがバーニーに買収されるやいなや、フェラーリもまもなくそれに追従したのだった。


ウィットマーシュはFOTAの存続のために懸命に動いたが、全員の合意なくしては、その力の基盤は失われてしまう。ちょうどエクレストンの意図したようにだ。私はいつもこの崩壊がF1にとって酷くよくないものだと考えてきた。現在、われわれが有しているのはF1ストラテジーグループだ。この組織は、反対に、その主張のすべてに対し力を持っているが、たった数チームの利益しか代表していない。


ウィットマーシュはいつかまたF1のために働くのだろうか?「ありえないことではない。」彼は言った。「しかし、今のところ、私はF1にもどりたいと言うことはないだろう。」




いや~もうF1には戻ってこないんやないの?*6



☆個人的単語リスト
function=会合、式典、催し物
unsavoury=不味い、胸が悪くなるような
whereupon=その結果
rein=手綱
board meeting=取締役会議
not least=特に、とりわけ
candour=率直さ
assertio=断言、主張n
back then=その当時
countenance=支持する、認める
incumbent=現職の
step down=辞任する
inaugural=開会の
divide and conque=分割統治r
evaporate=蒸発する
buy off=買収する
follow suit人のまねをする, 先例に従う
unanimity=全員一致
demise=崩御、死亡

*1:palace coup.ウィットマーシュOUT、デニスINのアレのこと

*2:you don’t get many of those to the pound. これ意味がよく分からなかったので調べてたら面白いサイトを見つけました。よく分からない英語のフレーズをネイティブに直接質問できる掲示板、みたいな感じでしょうか?→http://forum.wordreference.com/threads/you-dont-get-too-many-of-them-to-the-pound.1262109/

*3:Although an absolute purist in the engineering sense, he admitted that he later came back somewhat from that position, in the sense that he accepted that the interests of the fans should not be ignored.

*4:F1の商業権を持つ会社(この会社のトップがバーニー)の株の大半を持つファンド、らしい。まあざっくり言えば、バーニーとこのCVCがF1を仕切ってるってことで…いいの?

*5:Sadly, no one had told Ecclestone, who had always found this policy highly successful, and did so again

*6:むろん戻ってきてくれる分にはwelcomeですが!