ライコネンの思い出 byナイジェル・ルーバック
またもやマクラーレン・ホンダが大変だったスパでしたが、当ブログはそれをものともせず我が道を進んでゆきます。今回のテーマはライコネン。ライコネンといえば、つい先日大逆転でのフェラーリ契約更新を勝ち取ったばかりですが、その報を受けて、マーティン・ウィットマーシュ大好きなあの男、ナイジェル・ルーバック御大が一筆啓上しております。
タイトルやタイミングを見ても、さすがにライコネンについての濃ゆいお話であろうな、などと油断していると、確かにライコネンの話ではあるのだけど、なぜかナチュラルにマーティンの名前が出てきて……というスタイル、個人的には嫌いじゃないwといった感じの記事でしょうか。
原文はこちら。だだしかし、今回自分の英語の実力からすると、本当に難しくてですね、結構挫折しそうになったりしたのですが、それでもなんとか文章にしました、というようなクオリティです。つまりは、まあこれまでの中でも雰囲気訳度ナンバーワン、という感じで、そのあたりどうかご容赦or誤訳指摘をば賜れればと思っております。★つきは相当怪しいところ。
キミ・ライコネン 理解されない変わり者
シリーシーズンはフォーミュラ1の世界にはつきものだ。その伝統はヨブの子供時代から始まり、今なお続いている。ときに主だった契約がいっさい更新の俎上に載らないような年もあるが、しかし、たいていは目ぼしいスターの少なくとも一人にその可能性があるもので、そのときは、そのドライバーの運命の転換点を目撃することになる。行き先が知られれば、すぐさまほかの契約がその空席に滑り込んでしまうからだ。
今回注目を集めたのはほかでもないフェラーリだった。すなわち、キミ・ライコネンがセバスチャン・ベッテルのチームメイトとして来年もチームにとどまるのか否か。ボッタス、リカルド、ヒュルケンベルグ、そしてフェルスタッペンの名さえもが、さまざまに飛び交い、そしてマウリツィオ・アリバベーネにより時折ほのめかされる言葉からすると、彼はライコネン放出に傾いているかのよう思われた。
ライコネンは昨年よりもずっと競争力を発揮しており、今年は、惨憺たる出来だったF14Tよりも相性のいいクルマに乗っている彼ではあるが、しかし、それでも決して最高のシーズンを送ったわけではなかった。彼が輝きを放ったレースもあったことは間違いない。とりわけメルセデス勢に割って入ったバーレーンの二位フィニッシュはそうだろう。そしてまた彼のツキがいまいちだったことも否定できないことだ。だがしかし、以下のことも言わなければならない。すなわち、予選での彼は失望させられるものだったし、レースでもベッテルに並べないことが少なくなかったのだ。
しかしそれにもかかわらず、フェラーリは、ライコネンは来年も確実にチームにとどまるとベルギーGPの数日前に発表した。噂されるところによれば、フランク・ウィリアムズがボッタスの契約の買い切りに提示した価格は、マラネロの名門チームにとってでさえも高すぎた。リカルドのレッドブルとの契約も、ありうる限り完璧なまでに隙が無いようであった。そして、2014年シーズンを考えてみれば、なんにせよベッテルがダニエルと再びペアを組むことにどれほど熱心だったかは疑わしく思われるものだ。
フェラーリは、もともと二年前はヒュルケンベルグを雇うことを考えていたのだが、不思議と彼に対しては情熱に乏しいままである。個人的には、もし私がジーン・ハースで、小切手帳つきのドライバー選択権を持っているのなら、彼かロマン・グロージャンとサインしようとするだろう。ひょっとしたらニコは、不可解なことではあるが、トップチームとの契約を手にすることはないのかもしれない。そして、おそらくは彼がポルシェからオファーを受ける日は来るだろう。しかし、今のところは、彼はF1での夢に全てを賭けている。
フェラーリの話ではなかった★*1。ライコネンは2016年も良い友人であるベッテルの傍らにいるのは間違いないだろう。「1年だ。オプションはない。」アリバベーネははっきりとスパでほのめかした様であるけれども★*2。多くの人は、彼の目が後継としてフェルスタッペンに向けられていると考えている。
それは必ずしもキミにとって世界の終わりではないのだろう。彼は10月に36歳になり、最近第一子が生まれ父親にもなった。彼は言う。今までかかわったどのチームよりも、今のフェラーリにいることをハッピーに感じていると。そして、それは誰も疑わないだろう。しかし、F1での13年のキャリア(プラスWRCでの2年)で、彼はワールドチャンピオンになったし、人生を複数回繰り返せるほどの財産も築いた。たいていのドライバーより離脱は容易だろうと普通考えるだろう。
あるいはそういうことでもないのかもしれない。無頓着さは、ライコネンの一貫したスタイルであり、それは今までも常にそうだった。それは2001年のザウバー時代からであり、当時マックス・モズレーは、ライコネンの経験不足に懸念を抱き、FIAスーパーライセンスの適格性に疑義を表明していたものだったが、それ以降も彼はまったく変わらなかった。ポディウム上での喜びにせよ、敗北の苛立ちにせよ、キミはほとんど感情を表に出さない。それはまるで、彼はなににも煩わされることの無いかのようだ。質問への短くてそっけない返答は、ジャーナリストにとってはフラストレーションを感じるものかもしれないが、明らかに世界中のファンを楽しませている。ファンにお気に入りのドライバーを尋ねた最近の2つの調査では、一方では1位、もう一方では2位の人気だった。
彼が所属していたチームにおいても――ときおりその忍耐を試すところがあったにもかかわらず――ライコネンは人気のある男だった。ラリーへの挑戦ののち、F1にカムバックしたライコネンは、ロータスで見せたパフォーマンスで大いに感銘を与えたものだが、その当時彼についてマーティン・ウィットマーシュと話したことを思い出す。マーティンはライコネンとマクラーレンで5シーズンを共にした人物だ。
「キミには驚かなかったよ。」彼は言った。「私が思うに、おそらくあの最高にとがっていた部分は失われてしまった。彼とは、ほとんど天才と呼べるほどの切れ味があったころに苦楽を共にしていたのだからね。でも彼は今なおきわめて優れた仕事ができるし、ミスも少ない。」
「キミはかなり誤解されやすいヤツなんだってことを言っておかなきゃいけないね。彼はパーティをしたり酒を飲んだりするのが本当に好きなんだけど、実際の彼は、トレーニングに関しては、多くの人が思っているより、ずっと規律正しくこなすし、またとても賢い人間でもある。事実、彼はあの世界でもっとも頭の切れるドライバーの一人だ。彼は多くを語らないし、たいていは不躾な態度をとるので、必ずしもそうは思われないみたいだけどね。あともう一点。私の考えでは、彼はクルマを理解して、それと意思疎通を図ることにかけてはベストのドライバーの一人だ。」
「『コミュニケーション』と『キミ』が同じセンテンスにあるのはちょっと不思議な感じがするかもしれないが、彼は私の大好きなドライバーの一人なんだ。彼はめちゃくちゃ速く走れる能力があるし、とても賢くもある。彼は全てを持っていると言えるだろうね。ただ、彼に無いのは、全てをささげるという気構えかな。」
「ある年のモントリオールにいたときのことを思い出すよ。それは連戦で、翌週はインディアナポリスに向かう予定だったんだ。日曜の夜、彼はラスベガスに飛ぶつもりだった。仲間とパーティをするためにね。キミにこう言ったことを覚えてるよ。『キミ、なんにせよ君は大人だ。だから君がしようとすることを、君はするのだろう。そして我々はそれを止めることはできない。でも、わたしはこの質問を君に投げかけることだけはしたい……。』」
「当時、フロントローに着くことはとても重要なことだっただろう?あのころはそれほど多くのオーバーテイクはなかった。わたしは言ったんだ。『もし六日後のインディアナポリスで、縮められたはずの1000分の5秒差でポールを失うとしたら、そしてそれがモントリオールからタイムゾーンの異なるラスベガスに飛んで、酒を飲んでパーティをちょっとやって、それでまたインディアナポリスに急いで戻ってきたせいだったとしたら、君は自分を思いっきり蹴り飛ばしてやりたくはならないかい?』彼は私に笑みを見せて、うなずいた。口にはしなかったけれども、それは同意したことを示したように思えた。そして1時間後、彼はラスベガスに向かっていたんだ!そのとき彼はチャンピオン争いをしていたのに!」
「キミはロンを心のそこから嫌っていたけれども、わたしはいつもキミとは問題なかったし、09年末にフェラーリから追い出されたときも、再び彼とサインすることも考えた。我々は、彼のマネジメントと交渉していたが、彼らはちょっと……コマーシャルな部分に熱心すぎた。ちょうどそんな折に、ジェンソンが契約できる状況になり、全てが正しい場所に収まった。それで交渉は終わったんだ。」
「キミを見てるとひどくもどかしい感じがするよ。彼は今も変わらぬ頭脳をもっているし、並外れたペースもある。でも彼がそうしたものを大切にしないということが、人をどうしてもイライラさせてしまうんだ。彼は自分のポテンシャルをわかっていなかったし、今もその極限まで追い込んだりすることは無いのだろう。それは本当に残念なことなんだ。とても洞察に満ちていて、乾いたユーモアのセンスがあって……私はアイツが本当に好きなんだよ……。」
ライコネンは今も変わらずファンの人気がある。その理由は、この政治的な正しさばかりが叫ばれる退屈な機運の中で、人々が今よりもおおらかだった時代へと逆行する人物だったからなのだと私は思っている。彼が数年前ジェームス・ハントのヘルメットを着用してモナコに現れたことはたまたまではない。彼は自分は生まれるのが遅すぎた、70年代のF1だったら自分に合っていただろう、と発言している。来年末以降も彼がF1キャリアを続けていたら私は驚くだろうが、しかし、先に述べたように、それは彼を悩ませるものではないのだろうとも思う。表面上のものごとは、大した問題ではないのだ★*3。
マーティン「キミはロンは嫌いだったけど、私とならOKだったZE」*4
☆個人的単語リスト
intrinsic 本来備わっている、固有の、
pivotal 極めて重要な、回転の軸となる、
invariably いつも、
fall into place 正しい場所に収まる、落ち着くべき所に落ち着く
bandy 噂などを言いふらす
to one's taste ~の好みに合った
lousy シラミだらけの、〈話〉劣っている、質の悪い
for all ~にもかかわらず
watertight 水を通さない、〔議論・計画などが〕水も漏らさぬ、すきのない
in light of~ を考慮すると
lukewarm 〔液体が〕生ぬるい、熱のこもっていない、
Carte Blanche カルテ・ブランシュ。Diners Clubのプレミアム・クレジットカード;白紙委任状
cheque 小切手
unfathomably 不可解なほどに
firm 〔信念・主義などが〕断固とした、確固たる
enthusiast 熱心な人、熱中している人、ファン
discipline (人)に自制心を持たせ(人)に規則を守らせる
flippant ぶしつけな
demeanor 〔性格が表れる〕振る舞い
back-to-back 引き続いていて
at the end of the day 最終的には、結局のところ
piss 小便する卑俗〉〔人を〕怒らせる
compromise 危険にさらす、〔信用・評判を〕落とす〔名誉・経歴・体面を〕傷つける
dreary〔天候などが〕陰鬱な、物悲しい、〔仕事などが〕退屈な、つまらない
throwback 逆行、先祖返り
savor 味がする、香りがする、匂いがする、~を十分に味わう
*2:although Arrivabene sounded firm at Spa: “One year – no option.すみません、ここ大事なところなんですけど自信ないです。間違ってた場合、ご指摘いただけると幸いです。個人的には、soundでぼやかしておきながら、firmできっぱり言い切るって、どういうニュアンスなのだろうか…という感じです。涙
*3:On the face of it, not much does.
*4:なんていうか、それ自分で言うんかマーティンよ…って感じてしまうのはお国が違うからなんすかねwただまあ確かに、あのコチコチのロンとライコネンでソリが合うとも思えずですがw
BBCF1シーズン中間レポート:評価の高いコメントトップ10(ネタ)
さきほどアップしたアンドリュー・ベンソン氏のレポートのおまけです。彼の記事はコメントがつけることが出来るので、付いたコメントのうちもっともレートが高いコメントトップ10を訳してみました。
中にはぼちぼちキツめのものもちょろちょろ含まれていて、いくらBBCサイトの読者からの評価が高いコメントといえども*1、はっきり言ってこんなん訳すのはまあまあお下品だとも思うですが、まあほかに話題のないF1夏休み中だしいいのかなとwww 所詮はむこうのネット民の戯言ですし、言ってることが正確なのかも知りませんが*2、まあ一種のネタとして受け取っていただければ。でもABさんさぁ、あんたちょーっとホンダに厳しいんとちゃうか?笑
ソースはこちらの記事下部の"Comments"の"Latest first"にポインタをあわせて、"Highest rated"に切り替えると出てきます。
F1シーズン中間レポート:評価の高いコメントトップ10
No.1
12. Posted by Errrrmmmm 1 Aug 2015 09:57
マクラーレンのドライバーのスコアはちょっと高く見積もりすぎじゃない?彼らはかろうじてレースをフィニッシュする程度だったわけで(彼らの落ち度ではないけれども)、どうやってこんなスコアを稼いだろう?
Good 18
Bad 2
No.2
16. Posted by Leodisthefirst
1 Aug 2015 10:32
だからこういうのはしっかり考えなきゃならないんだ★*3
ベンソンによれば、ウィリアムズのクルマはレッドブルよりも2ポイント低い評価だ。チームも2ポイント低い。ドライバーはもレッドブルの両ドライバーより悪いか同じ。
しかしウィリアムズのドライバーはランキング4位と6位で、レッドブルは7位と8位。そしてコンストラクターのランキングは、レッドブルの4位に対し、3位だ。
記事:1/10点
Good 18
Bad 2
No.3
2. Posted by Dynamo11
1 Aug 2015 00:40
マクラーレン・ホンダは来年のために問題が解決できるといいね。
Good 16
Bad 1
No.4
61. Posted by CoolKev
1 Aug 2015 20:55
52番さん
現実をきちんと見よう。ニコは36周目にパニックに陥っていた。ルー*4のあらゆる動きを真似して、ピットに入ったときもミディアムを選択してしまった。クルーがそうしないように警告していて、それどころかソフトをはかせたがっていたのにも関わらずだ。
まとめると、ニコは自分にもっとも適したタイヤ戦略を計画して考えるかわりに、彼はおよそルーが自分の前にとどまることを請け負ってしまったんだ。同じコンパウンドのタイヤの時は、ルーの中のレーサーがロズベルグを支配してしまうからね。
Good 12
Bad 2
No.5
29. Posted by Joel
1 Aug 2015 11:39
あなたは昔からちょっと偏った記事を書いてきたよね、アンドリュー。でも、マクラーレンがパワーでそんなに劣るとすれば、あなたはいったいどうやって彼らのクルマが9点に値するとわかるんだろう。メルセデスから1点しか離れていない点だよ!?お願いだよ。それを解説した記事を読みたいな。アロンソとバトンの二人への査定も、レース中にそれほどのものを見るチャンスがなかったことを考えれば、バランスを欠いている。あなたはいつもバトン/マクラーレンのファンでしたね。来年はこの企画はクルサードにやらせてみたらどうかな。
Good 12
Bad 4
No.6
7. Posted by Alexander Beynon
1 Aug 2015 09:16
ウィリアムズは2014年に復活、フェラーリは2015年。マクラーレンは16年かな?
わからないけどね。
Good 9
Bad 0
No.7
65. Posted by paulmeth
1 Aug 2015 21:55
アンドリュー・ベンソンはチーフF1ライター。
一人チームのチーフなんだけどね。*5
このことは、この記事が誤りを含んだものだということを物語っている。
もしこれが学校のレポートなら、オフステッド*6に告発されて、その学校は閉校だろうね。
Good 9
Bad 1
No.8
66. Posted by Lai
2 Aug 2015 00:48
アロンソが幸運にもハンガリー5位に滑り込んだのは、あの日馬鹿げたことをしでかした数人のドライバーがいたからだ。それで彼は9点か。うーん、いいだろう。彼は4レースもフィニッシュしたしね。
Good 8
Bad 1
No.9
64. Posted by Tanglewood
1 Aug 2015 21:39
63番さん
>リカルドの典型的な失態がニコのタイヤにパンクさせた
あなたは別のレースを見ていたに違いない。というのも、ロズベルグは、コーナーの脱出で異なったラインを取っていて、グリップを失い、それでリカルドのほうにスライドしてしまったんだ。「失態」はすべてロズベルグによるもので、そのせいで、リカルドの予期せぬが価値ある勝利が台無しになったのかもしれない。
Good 8
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No.10
45. Posted by straight talker
1 Aug 2015 15:50
BBCから出たいつもと違う現実的な評価だ。思うんだけど、彼らはやっとロズベルグの過大評価をあきらめたんじゃないかな。そんなことしてたらすごく馬鹿みたいだもんね。
Good 8
Bad 2
ネット民「ベンソンに物申す!!」
☆個人的単語リスト
get it all sorted out 全てを解決する
keep it real 自分}を見失わない、自分自身[の心]に正直になる
an and
in your time=私の若いころ
for a change 変化をつけて、いつもと違って、珍しく、趣向を変えて
hype〈俗〉~を誇大に宣伝する
*1:というかそのコメント総数も少なめなのでレーティングによる選別機能がきちんと働いてるかも微妙なのですがw
*2:たとえば、コメントにベンソンはバトンのファンだからーみたいなこと書いてる人がいますが、たぶんベンソンが好きなのはアロンソです。というか、ファンのアロンソのキャリアがスポイルされそうだからホンダに対して厳しめなのかなと個人的には考えております。
*3:So work this one out.すみません、ここ全く自信ないです。
*4:訳注:ルイスのことと思われますw初めて聞きました。
*5:Cheif of one.実はこれは前から気になっていたのだけれども、確かにBBC内でF1専業のライターってたぶん一人しかいないっぽいんですよねw…まあ、デビクルやらエディ・ジョーダンやらとチームを組んで、そのチームの主席格がアンドリューさんだってことですかねw?…いや、この辺よくわかってないので、ほんと単なる一個人の憶測ですw
*6:訳注:OFSTED。イギリスの教育水準局のことだそうです。学校と教師の水準を調査することを目的とした非政府系組織とのこと。
ベンソンの2015シーズン中間レポート:メルセデスからマクラーレン、マノーまで
えらい久しぶりの更新です。いつの間にか今シーズンもう半分がすぎて夏休み。訳せる記事も限られてございます。なのでまあ賑やかしといった趣でBBCのアンドリュー・ベンソンさんのシーズン中間レポートを訳してみました。まあすでに話題にはなったようなので、新鮮味もないかもしれませんが、一応これが全文ですね。彼の査定について、いつものベンソン節も炸裂してる感が若干ありで、どう判断するかは読者次第といった感じなのですがw
元記事はこちら。あやしいところは★つき。なお次回は本記事のおまけなのでぜよければご覧ください
2015シーズン中間レポート:メルセデスからマクラーレン、マノーまで
F1はシルバーストンとハンガリーでのスリリングな2レースを終え、夏休みに入る。
ルイス・ハミルトンとメルセデスはドライバー、コンストラクター両選手権をやすやすとリードしているが、しかし、ともに弱点を露呈し、シーズン後半も見込みが大いにあることを示した。
今シーズンは、息をもつかせぬ14週間の9レースで勝負が決まる。8月23日のベルギーで再スタートだ。
しかし、各チームはいかにこれまでの10レースを戦い、そしてどのような改善が必要とされるのだろうか。
われわれはシーズン中間レポートをまとめ、各チームのクルマ、エンジン、ドライバーに対して10点を満点として点数をつけた。
チームの順番は、チャンピオンシップの順位に沿っているが、しかし、もし我々がチームに与えるスコアが、単に公式の順位を反映したものであるならば、こんなことをしても意味がないことだろう。実際にそのようになってもいない。
メルセデス
今シーズンメルセデスが両世界タイトルを失う恐れは現実的には皆無だ。しかし、今シーズン残りのレースのためにやるべきことはある。
クルマとエンジンは完璧といってもいいほどだが、チームは時にオペレーション上の弱さが現れてしまうことがあった。
すなわち、たとえばハミルトンのモナコにおける遅すぎたピットインや、ハンガリーでのニコ・ロズベルグへの奇妙なタイヤ選択などの戦略上の誤り、唐突に生じる不安定なスタートなどであり、後者は、スタートのオートメーションのレベルを制限するルール変更がまもなく施行される件に関して懸念材料となる。
ハミルトンは、ハンガリーを除き、すばらしいドライビングを披露している。ただ誰もが考えるであろうが、ハンガリーのそれは例外的なものだ。彼のチャンピオンシップ上の21ポイントのリードは、確かに実際の差ではあるが、その差は彼がロズベルグに対し優位に立っている度合いを示すものとは全くかけ離れている。ロズベルグは、彼を困らせようとするなら、より精進する必要があるのだ。
車体 10
エンジン 10
チーム 8
ハミルトン 9
ロズバーグ 7
合計 44
フェラーリ
フェラーリの今シーズン前半戦は、二つの、つまり、分かたれた物語だった、
フライアウェイ序盤においては*1、彼らはメルセデスちょっとした悩みの種だった。しかし、その後、フェラーリが見つけた燃料の流量に関するレギュレーションの抜け穴をFIAにふさがれ、銀のクルマから0.5秒はゆうにに遅れるようになってしまった。セバスチャン・ベッテルのハンガリーでの勝利は、そんな逆境を跳ね除けてのものである。
2014年からの大きな進歩を果たしたエンジンを見れば、先頭に追いつくには、シャシーにどれほどの作業がさらに必要とされるかわかるというものだ。
ベッテルはフェルナンド・アロンソの離脱によって空席になっていたチームリーダーの座に問題なく滑り込んだ。キミ・ライコネンの将来に関しては、もっともの話なのであるが、いまだ不確実のままである。前半戦には決して説得力があったわけではなかったからだ。
ウィリアムズ・メルセデス
相応の文脈において考えるならば、これはウィリアムズの目覚しいシーズンのひとつだろう。ビッグチームの半分の予算であるのに、ウィリアムズはしばしばフェラーリに肉薄し、彼らにトラブルを起こさせた。シルバーストンでは、後半に雨が降るまでは、完全にフェラーリを打ちのめしていた。
しかし、クルマはある状況、そしてあるトラックでしか十分に機能しない。スパやモンツァでは強力だろうし、ツイスティーなシンガポールでは、ちょうどモナコやハンガリーで苦戦したように、それほど強くはないだろう。低速でのグリップとダウンフォースが課題なのだ。
また多くの人は、このチームがイギリスGPで作戦を分けなかったことで、チャンスをみすみす逃したと考えている。
バルテリ・ボッタスはかろうじてフェリペ・マッサをポイントでリードしているが、そのキャリアの勢いを削がないようにするには、自身はこのブラジル人を上回っているとより説得力のある形で示す必要がある。
車体 7
エンジン 10
チーム 7
ボッタス 7
マッサ 7
合計 38
レッドブル
レッドブルは弱々しいシーズンスタートを切った。シャシーも4度のチャンピオンに期待される水準からは遠かった。
この主だった理由は、クルマのフロントにおける今シーズンのルール変更だ。それにより、かつてほどフロントをトラックに対して低くして走行することが出来なくなり、それがダウンフォースを減らしてしまった。
先の2レースにおける大きな進歩は、対策法が見つかったことを示唆する。しかし、彼らは依然としてルノーエンジンに足を引っ張られている。ルノーは、メルセデスに対し、50馬力程度劣ると見られている。
2014年に輝かしい1年すごしたダニエル・リカルドは、安定しない時期をすごしてきたが、いまだに第一級の存在だ。ダニール・クビアトは、スロースタートだったが、リカルドをギリギリまでプッシュし、クリスチャン・ホーナーが口にした「本物」との宣伝文句を証明し始めている。
車体 9
エンジン 6
チーム 9
リカルド 8
クビアト 7
合計 39
フォースインディア・メルセデス
厳しいものだったシーズンスタートを考えれば、フォースインディアは印象的な成績だ。彼らのクルマは、開幕前にたった数日しかテストができなかったのだ。
重大なアップグレードを施したクルマがシルバーストンに持ち込まれる前でさえ、彼らはとても堅実なリザルトを残していた。よく滑る性質と低速での十分なグリップを、それが可能なときには、最大限に生かしていた。
しかし、懸命になってもぎ取った5位を維持することはたやすいことではないだろう。また、ハンガリーで別々のクルマにおきた、リアサスペンションと、フロントウィングのトラブルも憂慮すべきである。
ニコ・ヒュルケンベルグは、ルマンでの勝利で、再び活力を与えられたようであり、セルジオ・ペレスも、その時が来ると際立つものがある。
車体 5
エンジン 10
チーム 7
ヒュルケンベルグ 7
ペレス 6
合計 35
トロロッソ・ルノー
信頼性に乏しいことと、チームが比較的経験不足であること。トロロッソのシーズンが目を見張るものとなるのを妨げたのは、この二点だけだ。それらの但し書きがあってなお、彼らのシーズンはものすごく良いものではあった。
レッドブルのシルバーストンでのアップデートまでは、多くのライバルは、マックス・フェルスタッペンとカルロス・サインツにドライブされるトロロッソの方が、実際にはシニアチームよりも優れた車だと感じていた。予算は半分なのにだ。
しかし、予選で前に出ても、レースでは後退してしまうこともそれなりにあり、ルノーの信頼性の無さもまたトロロッソのポイント獲得を阻んだ。
両ルーキードライバーはともに独力で頭角を現してきたが、早熟の17歳、フェルスタッペンが、これまでのところ、今シーズンのスターの一人となっている。
車体 9
エンジン 6
チーム 6
フェルスタッペン 8
サインツ 7
合計 36
ロータス・メルセデス
待機状態にあるチームである。すなわち、オーナーのジニ・キャピタルが、ルノーがチーム買収を行うのかを見極めるために静観している間、投資が控えられているのだ。これが、リザルトへの痛手となっている。
フォースインディアのドライバーでさえ、チャンピオンシップではロータスが自身を上回るはずだと認めている。彼らがそうなってないのは、信頼性のなさと、いくらかのひどいドライビングのせいだ。
今シーズンはアップダウンがあったが、ロータスは確実にポイントを取るのに十分な競争力があった。全てのレースでトップ10の後半に入れただろう。
それはロメイン・グロージャンがたいていはやっていることでもある。一方、チームメイトのパストール・マルドナードはアクシデントを頻繁に起こし、まるで雇い主を激怒させるための新しい方法を探求し、可能な限りステュワードからペナルティポイントを収集しようと、限界までトライしているのかのようだ。*2
車体 6
エンジン 10
チーム 8
グロージャン 7
マルドナド 3
合計 34
ザウバー・フェラーリ
ザウバーは強力なシーズンスタートを切った。主にフェラーリのエンジンにおける大きな進歩によるものである。しかし、他チームのクルマの開発が進むにつれて後退していった。
クルマはタウンフォースを欠き、シーズン後半にアップグレードが計画されるも、チームはリソースを欠いている。
ドライバーのフェリペ・ナスルとマーカス・エリクソンはともに手堅く仕事をこなした。ブラジル人がチームメイトバトルで優位に立っている。
車体 4
エンジン 9
チーム 6
ナスル 6
エリクソン 5
合計 30
マクラーレン・ホンダ
リザルトを見るだけではわからないだろうが、これはマクラーレンの2012以降ではベストのシャシーだ。
メルセデスほどではない。しかし、それ以外でのベストなクルマ、レッドブル、トロロッソ、フェラーリのあたりの上のほうにいる。★*3。しかし、あまりにもギアボックスの問題が多すぎた。
ホンダエンジンに関しては、150馬力くらいはパワーで劣っており、また、たいていのストレートでは、そのストレートエンドを前にハイブリッドのブーストを使い切ってしまう。クルマが2.5秒落ちなのも不思議はない。
ホンダは確かにエンジン開発作業を比較的最近開始したのかもしれない、しかし、いまや彼らは競争力だけが意味を成すF1の世界にいるのだ。ホンダは来シーズンに向けてより多くのパフォーマンスを約束してはいて、またそれはひどく求められているものでもある。
豪華な二人のドライバーラインナップの差は接近している。しかし、フェルナンド・アロンソがジェソン・バトンとのチーム内バトルに僅差で勝っている。しかし、間違いなくグリッド上で最高のドライバーラインナップは無駄になっている。
車体 9
エンジン 2
チーム 7
アロンソ 9
バトン 8
合計 35
マノー・フェラーリ
マノーは見たままである。ほとんど資金力が無く、1年落ちのクルマとエンジンで生きのびようと苦闘している。
彼らは冬の消滅の危機をなんとか乗り越え、2015年は来年のための地盤固めに全力を尽くすと明言した。手持ちのなけなしのお金をこのクルマの改善に使うことは、優先順位が低いのだ。
ドライバーのウィル・スティーブンスと、ロベルト・メリーはともにしっかりしている。スティーブンスの支援者が、破産しないようチームを手助けしているのだが、このスティーブンスが今のところ若干メリーを上回っている。しかし、優劣の最終的な判断には、もっと時間が必要だろう。
車体 2
エンジン 4
チーム 6
スティーブンス 5
メリー 5
合計 22
アンドリュー・ベンソンさん
☆個人的単語リスト
promise 見込みがある、望みがある
mark 学校の授業の得点、評点
vacate (仕事から)身を引く、(建物などから〕退去する
léss than… 決して…でない.
stellar 星のような、〔経歴などが〕輝かしい
wobbly 〔不安定であるために〕グラグラする、ヨロヨロする、フラフラする
class act 一流品
real deal 《the ~》〔人の才能や製品などが優れているという意味で〕本物、半端でない
assert 断言する、言い張
haul 〔重い物を〕引く[引っ張る]こと、〔重い物を〕運ぶこと、運搬{うんぱん}
make one's mark 名を成す[上げる]、頭角を現す、成功する
holding pattern 《航空》〔着陸許可が下りるまでの〕待機経路、待機状態
detriment 損害、損失、不利益
edge 〈相手に〉辛勝する,僅差で破る
*1:In the early long-haul racesで、long-haulで長距離の旅行みたいな意味なのですが、"long-haul events(Australia, Malaysia, China, Bahrain, Canada, Singapore, Japan, United States, Mexico, Brazil and Abu Dhabi)"と書かれている記事を見つけたので、こんな感じで訳しちゃいました。というかフライアウェイの方使い方合ってますかねw?
*2:w
*3:but it is up there in the region of Red Bull/Toro Rosso/Ferrari among the best of the rest.
マルドナドは偉大なドライバーへと進化するのか?
予告どおり、マルドナドの記事訳しましたよおおおおおお。書き手は当ブログ御用達のマーク・ヒューズ氏。彼はやはりアツいですね、とにかく。オーストリアGPのフェルスタッペンへのあのオーバーテイクから詳しーくMaldoについて書き起こされております。あのMalの挙動に関しては、BSの放送*1だと、確かモリワッキネンさんはちょっと引き気味でコメントしてたように記憶しておりますが、彼によるとそんなことはなく、あれこそがMaldoセンパイの進化を物語るもの、的な感じらしいですよ。う~ん、どうだろうw
ともかくも元記事はこちら。そして、この人の英文は表現とかが他の人よりちょっと込み入ってて、有り体に言えば個人的には若干難しくてですね、まあそんなわけなので、訳の精度はいつもよりさらに落ちておりますゆえ、ご容赦&誤訳指摘など賜れればなと思う次第でありまする。まだまだ勉強じゃ!
オーストリアのすばらしい回避を経て、パストール・マルドナドは、偉大なドライバーになりうるだろうか?
ロータスドライバーから「これまで見た天性による反射的車体コントロールの中でもっとも素晴らしいもののひとつ」であると思われるものを目撃して、SKY Sports F1のアナリスト、マーク・ヒューズは、パストール・マルドナドが偉大なドライバーとして花開くか考察する。
パストール・マルドナドの最新のレースにおける、マックス・フェルスタッペンとの7位をかけた戦いは、オーストリアGPのハイライトだった。これまで見てきた天性による反射的な車体コントロールの中で、もっとも素晴らしいもののひとつにおいて、このレースは最高潮に達した。
パストールはマックスにフェイクを仕掛けようとしていた。彼らがピットストレートを走行していたとき、インサイドからパスするかのように直列に並び、そのうえで、アウトサイドに向けて左側へ転換したのだ。しかしこのとき、彼は、タイヤが古いフェルスタッペンはものすごく早くブレーキしなければならなかったという点に足をすくわれてしまった。
それゆえパストールは、自身が、モナコにおけるマックスと似たような状況にいることに気づいた。このとき、マックスは、ロマン・グロージャンをオーバーテイクしようとしていたのだった。DRSを使用して8速全開、時速201マイルで走行していたマルドナドは、減速するトロロッソをの後方を避けるため、左側へと急旋回せざるをえなかった。
結果として起きたあの荒々しい一瞬は、このロータスドライバーとしてはまったく取り返しのつかないものに見えた。車体の裏面がバンプを擦って火花が噴出し。リアのグリップを失い、横向きに回転した。ビデオによる詳細な分析により、車はラインから最大で50度も外れていたことが確認されている。
いつもなら、マルドナドの車はスピンを喫し、おそらくは、コース外の芝に沿って左側のバリアへ、あるいはもし運が良ければ、なのも起こることなくターン1のランオフエリアまで行ってしまったことだろう。そして、事故と事件だらけのF1キャリアにおける、マルドナドの新たな惨事の1ページとなっていた、ただそれだけのはずだ。
しかし、そうなる代わりに、マルドナドはどういうわけかスライドに即座に対応して、うまくカウンターステアを当てて――このスピードにおいてというのが一層印象的だ、再び素早くそれを戻して、逆方向に流れようとする車を押しとどめ、スピンさせなかった。
DRSを閉じてブレーキを踏み、リアにグリップを戻した。そして彼は減速してコーナーへ向かっていった。その上、フェルスタッペンをパスしてそれをやったのだ。エスケープゾーンに滑り込んでいったのはフェルスタッペンのほうだった。マルドナドの反応と瞬間的に発揮された本能は大いに注目すべきものだ。完全に非常警報ものだった緊急回避は、時間にすればほんの1秒にすぎず、それはほとんど早回しの映像のようだった。そのことが、この注目すべきドライビングが、どれほどたやすくは実行できないものであるかを物語っている。
間一髪のタイミングと奇跡的なハンドルさばきによって、激しいレースから二戦連続となるポイント獲得を果たした。このレースとカナダでの素晴らしい6位入賞は、素晴らしいスピードを発揮したモナコでの一戦に続くものとなった。彼はモナコでは、ブレーキシステムにおけるリークに苦しめられ、リタイアを強いられている。
もちろん早合点はしてはいけない。が、しかし、F1で5年目のシーズンを送っるマルドナードは、ようやく信頼できるドライバーになりつつあるのではないだろうか?それも、彼はスピードとその攻撃的スタイルのスリルを依然として失っていないのである。
今年序盤、彼の支援者PDVSAによるチーム運営への莫大な貢献があるにもかかわらず、ロータスは彼へのフラストレーションを募らせていた。フラストレーションは、繰り返されるインシデントの下で発揮される、そのレースペースが優れているだけに、一層深いなものとなっていた。
彼は気まぐれなピレリタイヤに対して格別に鋭敏な感性を持っていて、スティントの最後まで良い状態を保たせる技術に関しては、最高峰のドライバーの一人である。この能力によって、彼はスティント終盤において、チームメイトのロマン・グロージャンよりも強力なレースペースを発揮できる。しかし、いくつものミスが――どの状況も同じではなく、それゆえ予測することは不可能なのだが――本来手にするはずのその恩恵を損ね、何ポイントもの価値あるポイントが失われてきた
かつてウィリアムズも同様のフラストレーションに悩まされていた。そこでは、アレックス・ヴルツが、彼に対し専門的な助言を与えた。それは、しばしば事故の引き金となっていたホイールトゥホイールのバトルにおいて、すぐに頭に血が上ってしまうエモーションの背景にあるパターンを理解することに関してだ、彼はこのエモーションが頭をもたげてきた瞬間、思考プロセスを超えてしまうのだった。
ひとたび状況が分析されると、パストールはそのメカニズムを十分に理解したようだった。しかし、高いストレスがかかるときには、われわれはみな、かつての行動に逆戻りしてしまう傾向がある。そうしたエモーションがやってきて、結果としてその本能を変えてしまう瞬間を彼が認識するに十分な経験をつむには、長い時間がかりそうだった。
しかし、F1はそのときが来る前に彼に見切りをつけてしまうのだろうか。彼はベネズエラで愛されているドライバーあり、母国ではものすごいスーパースターだ。それに付随した政府のサポートも持っている。少なくとも、それらは、彼が単純に忘れ去られるのは妨げられた。
F1ルーキーイヤーのウィリアムズでのチームメイト、ルーベンス・バリチェロは、マルドナドのステアリング操作のテレメトリーデータにしばしば驚いていた。フロントタイヤはまるでスーパーマーケットのショッピングカートのタイヤみたいだと回顧している。しかしこのとても忙しいスタイルは速いラップを出すのにはしばしば極めて効果的だった。緊急的に反応するのではない場合においても、彼がそのような忙しいスタイルに馴染んでいたことは、おそらく、日曜のあの奇跡的な回避にも一役買ったことだろう。
2011年、彼は、ウィリアムズでニコ・ヒュルケンベルグが果たしたルーキー・ドライイバーという役回りを引き継いだ。このチームの当時のテクニカルディレクター、サム・マイケルはマルドナードのもともと持っているペースはもっと優れていると考えていた。しかし、チームは、2013年末に彼がチームを去るのを喜んだ。2012年のスペインGPで、フェルナンド・アロンソのフェラーリからの膨大なプレッシャーにさらされながらも、ミスひとつない磨きぬかれたドライビングを披露して優勝を果たしたにも関わらずだ。
最近のアクシデントのない走行が、彼の進化の始まりといえるのかを考えるにあたっては次のことが重要かもしれない。カナダで後ろから迫るペースの速いセバスチャン・ベッテルとフェリペ・マッサの車が彼を捕まえた時のことだ。彼は、そのタイミングが来たとき彼らにレースをするためのスペースを与える、という手続きを寸分の隙もなく行ったのだ。簡単に屈服するのではなく、彼らが仕事をするのを困難にさせつつ、しかし、譲るべき瞬間を正確に認識する。
さらに、日曜のフェルスタッペンとのバトルには、いつもなら彼が頭に血が上ってしまったであろうすべての要素が含まれていた。すばわち、遅い車、相手の防御に徹したドライブ、繰り返し頓挫するオーバーテイクだ。「彼は、あまりほくにスペースを残してくれなかった。ルールには、そうしなきゃいけないって書いてあるんだけどね」彼はレース後に言った。「彼がこういうことをしているのを見て、僕はもっと注意深く、しかしもっとアグレッシブにやっていかきゃいけないと自分に言い聞かせたんだ。」
この明らかに矛盾した要求をうまくこなすことができるかが、偉大なドライバーなのか、それとも無能、あるいはクレイジーなドライバーなのかの分かれ目なのだ。
過去にはクレイジーなF1ドライバーもいて、そのうちのいくらかは善良な市民に変貌さえしたが、それは、その初期の火花を散らすような速さを犠牲にしてのものだというのが相場だった。アンドレア・デ・チェザリスはそういうタイプの一人だった。マルドナドのように、多数の事故を起こすにもかかわらず長いキャリアを許されたドライバーだった。彼同様、莫大な資金を持ちこんでいたからだ。
最初の6シーズンは、彼は印象深いまでに速かった。しかし、恐ろしいほど無謀だった。80年代後半から90年代前半までのリアル、ダラーラそしてティレル時代までには、彼は信頼できるドライバーになっていた。しかし、遅くなっていた。マルドナドは、まったく遅くなる気配がない。しかし、車の中でどんどん冷静さを増していくかもしれない明白な兆しがある。
ヴィットリオ・ブランビラは75年のオーストリアGPで優勝するほど速かった――しかし、彼はその時でさえ、ゴールしたすぐ後にクラッシュしたのだ。彼もまたキャリア終盤には、事故を起こさないが遅いドライバーになってしまった。
ブランビラがオーストリアでコントロールを失ったのは、実は、マルドナドが日曜に奇跡的な回避をし倍所から100mくらいのところだった。マルドナドの狂気の裏に隠されていた偉大なドライバーが、ようやく表に出ようとしているのだろうか?*2
く~かっこいいゼ!*3
☆個人的単語リスト
culminate=最高潮に達する
sell~a dummy=~にフェイントをしかける
line up=一列に並ぶ
catch out=のしっぽを捕まえる、うそ・誤りを見破る
flat out=全速力で走る
swerve=[真っすぐな進行方向から急に〕それる
irretrievable=取り返しのつかない
cascade=滝になって落ちる
ground=grindの過去・過去分詞形
slew=回転{かいてん}する
deg=degree
course of events=首尾、なりゆき
pepper=たっぷりと~を振りまく
opposite lock=カウンターステア
split-second=ごく短い時間
not much more than=~にすぎない
footage=映像のある場面
by the skin of one's teeth=間一髪で
thwart=妨害する
one swallow doesn't make a summer=早合点してはいけない
vagary=とっぴな行動
gauge=ゲイジ、測る
red mist=判断力を鈍らせる極度に闘争的で怒りに満ちた感情
overpower=征服する
revert=〔元の習慣・状態などに〕立ち戻る
mitigate=怒り・苦痛などが和らぐ
passed over=賞味期限切れの
trolley=英ショッピングカート
impeccable=申し分のない、非の打ち所のない
BBC:ライコネン&アロンソのクラッシュの一部始終
あのライコネンの不可解なクラッシュについてBBCが一筆啓上していたので、どんなものかと思い訳してみました。
いやあ、今回の記事に関しては特に言うことがなくてですね、なんというか、この記事どうなんでしょうねえーとしか。ともかく訳してみましたので上げますということです。訳してる途中でこの記事ツマンネーなと気づいてしまったけど、ボツにするのももったいないからうpしとくかーとか投げやりな態度でやってたってのは秘密だZE*1。
元記事はこちらでございますよ。
オーストリアGP:ライコネンとアロンソの恐ろしいクラッシュはいかに起きたか
ファーストラップでのクラッシュはF1では新しいことではない。20台の息を呑むほどの速さの車がレーストラック上にひしめき合い、平均的には二台かそれ以上の車が最終的にクラッシュすることになる。
単に車体が強く打たれるだけのこともあれば、時には本当に目を見張るような事件になることもある。
日曜のオーストリアGPでの、キミ・ライコネンのタンクスラッパー*2とそれに続くアロンソとの酷いもつれ合いは確実に後者のカテゴリーに入る。
レーススチュアートはクラッシュはレーシングインシデントであり、どちらの過失でもないと決定した。
しかし、あわせて三回のタイトルと462回のグランプリ出走を記録する、二人のもっとも経験豊かかつ世界でも最高のドライバーが、一体いかにして、これほどに大規模な衝突を喫したのだろうか?
場違いで、不運で
ライコネンもアロンソもグリッド最後方近くでスタートした。散々な予選だったライコネンは14番手、競争力に乏しいマクラーレンのマクラーレンのアロンソは、グリッド降格ペナルティもあり19番手だった。
二人とも第一コーナーはアクシデントに巻き込まれることなくクリーンに通過し、ライコネンは14番手のポジションを維持した。アロンソはマノーの二台、レッドブルのダニール・クビアト、そしてザウバーのマーカス・エリクソンを処理して、このフィンランド人のテールについてターン2に入った。
ラインから出てしまったタイヤ
ターン2へのブレーキングで、ライコネンは前方の二台のロータスにとの間隔がやや近くなり、それにより、50mの看板をすぎたあたりでトラックサイドにタイヤを落とす羽目になってしまった。
このことと前のロータスの一台の存在によってライコネンのコーナー脱出は制限され、フォースインディアのセルジオ・ペレスの接近を許すこととなり、アロンソもまたライコネンの後ろに一層近づくこととなった。
パワーを落とすのに苦労する
それにもかかわらずライコネンは車をコントロールしているようだった。ターン3までの長い直線に向けて姿勢をきちんと正していたからだ。そしてDRS検地ラインを過ぎる直前になって初めて、リアエンドがルーズになった明らかな兆候が見られ、ライコネンはステアリングを鋭く左に切った。
その刹那、より顕著なステアリング修正がなされ、その次の瞬間には彼のレースは終わっていた。
幸運だった回避
言うことを聞かないフェラーリがマクラーレンに激しくぶつかり、ともに時速100マイル以上のスピードでバリアーに突っ込んでいった。結果、ライコネンの車の一部はマクラーレンの下敷きになった。
幸運なことに、二台の車は、マクラーレンがフェラーリの上に乗っかったまま――ライコネンの頭部からはそれほど離れてはいなかったのだが、バリアに沿って横滑りしていったが、ドライバーはふたりとも無傷だった。
「とても奇妙な事故だった」
もともと多弁ではないものの、ライコネンがレース後にこのインシデントに詳しく語ることはないだろうということは多分に予測されたものだった。彼は次のように語っている。「少しホイールスピンをして左に流れてしまった。これは普通ではないことで、だからうまく言えない事だよ。」
「なんでこんなに激しかったのか、なんでこんなことが起きたのか、確かなことは分からない。でも、最終的な結果はいつも同じさ」「とても奇妙な場所だった。たいていはコーナーを出るときにホイールスピンをするものだけど、明らかにこれはそういうものではなかった」
過失のなかった側としてもっともなことだが、アロンソはずっと率直だ。
「明らかにゾッとするものだった」このスペイン人はいう。「キミはプライムでスタートしたけど、これはおそらくグリップレベルに関しては助けになるものではなかった。彼はかなりホイールスピンしてターン2を出たから、車はムービングしていた」
「右側でも左側でもみんな彼をオーバーテイクをしようとしていたけど、そんなときに、彼はコントロールを失った、車は左側にいってしまい、そこに僕がいたんだ。僕らは二人とも壁に突っ込んだけど、彼の頭にぶつからなくてラッキーだったよ。」
「僕はブレーキしてたんだけど、僕のタイヤは空中にあった。幸いなことに僕らは二人とも無事だった。僕はいたところが悪かったよ。とても奇妙な事故だった。彼は5速かそのあたりで車のコントロールを失ったんだ。」
ライコネンにかかるプレシャー
「ライコネンはたしかにあのクラッシュに対してペナルティを課されなかったかもしれないが、しかし彼がこの事故を引き起こした疑いはほとんどないように思われる」BBCスポーツのアドリュー・ベンソンは言う。
ライコネンにとっては昨年のイギリスGPに続くファーストラップでの大きなアクシデントだ。彼はニキ・ラウダが「不必要だ」と形容したイギリスGPでのクラッシュでは47Gもの衝撃を受けた。
「あの事故は、フェラーリでの将来、すなわちライコネンにとってはF1においての将来なのだが、その点において彼にかかるプレッシャーをほとんど減らさないだろう。」ベンソンは続ける。
「このフィンランド人の契約は今年更新の時期を迎える。フェラーリは、更新するか否かの決定にはじっくり考えるつもりだという立場を明らかにしている。」
「もしライコネンが成果をだせば、シートを確保しない理由はない。しかし、状況は悪化し続けている。」
ソーシャルメディアの反応
#AustrianGPというハッシュダグは世界のトレンド入りした。一周目のクラッシュはいつもソーシャルメディア上のファンたちをエキサイトさせるものだが、衝突の後12分間で、アロンソの名前はツイッターで14000回近く言及された。
前フェラーリドライバーのアロンソの車がライコネンの車に覆いかぶさってる画像には、スペイン語で「いいね、やっとフェラーリの上に来たよ。」という言葉が添えられて、1000回ほどもリツイートされた。
「恐ろしい」「大きな」「ゾッとするような」という単語がこの二人の事故を語るのに用いられ、そしてニコ・ロズベルグが優勝を決めた後の1分間よりも、クラッシュ後の60秒のほうがややツイートは多かった。
アンドリュー・ベンソン BBCスポーツチーフライター
シーズン序盤、ライコネンは予選で苦しみ、フェラーリに解決するよう言われていた。しかし、この2レースについては、様々な状況のせいで、彼がそれを実行したのかいまだ明らかにならない。
2週間前のカナダでは、ハイブリッドシステムからのパワーの急上昇のせいでヘアピンでスピンを喫し、3位を失った。今週末のオーストリアでは、チームのミスコミュニケーションにより予選18位となった。厳密に言えば、どちらも彼の過失ではない。しかしフェアではないかもしれないが、これらの不運は、人の心に住み着いてしまう傾向がある。
ライコネンはフェラーリにとどまりたいと言っているが、いつものように、フェラーリが自分を雇い止めにすることに決めても、それが自分の人生を変えることはないだろうとも言っている。しかし、彼は言明しているのだが、これは厳密に言えば、F1に関する限り、フェラーリかあるいは引退か、ということなのだろう。
だから、掛け金は高い。彼は、自分の目的のためには、クリーンな週末と強力なリザルトを積み重ねることで、自身の運命へのコントロールを取り戻す必要があるのだ。
恐ろしい事故でしたなぁ…*3